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16 仲のいい家族
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アルデイルの国王夫妻との朝食を終えたルフィナは、カミルの妹姫であるアイーシャに誘われて彼女の部屋でのんびりと過ごしていた。
ルフィナとは違って兄妹の仲は良く、ずっと姉が欲しかったのだとアイーシャは嬉しそうに微笑む。国王夫妻もルフィナをあたたかく歓迎してくれているし、家族仲が良いのは素敵なことだなとルフィナも幸せな気持ちになれた。
「お義姉様は、本当に綺麗ね。ふわふわのこの髪も、まるで花のような美しい色だわ」
ルフィナの髪を結いながら、アイーシャがうっとりとつぶやく。彼女の髪は顎下で切り揃えた長さなので、ほとんど髪を結ったことがないらしい。自分の髪は長いと鬱陶しいから短くしているけれど、誰かの髪を結って遊ぶのは大好きなのだという。交換条件に耳を撫でさせてくれると言われて、ルフィナが断れるはずもなかった。
「アイーシャの耳だってふわふわで可愛いし、ご両親とお揃いの金の髪も瞳も、とっても素敵よ」
「うちは家族皆同じ色なのよね。だからこそお義姉様の色に憧れちゃうんだわ。もしかしたらお兄様とお義姉様の子は、こんな綺麗な髪色をしているかもしれないわね。すごく楽しみ」
アイーシャの言葉に、ルフィナはさりげなく自分のお腹を撫でる。カミルとの子がここにいるかもしれないと思うと、胸がそわそわするような気持ちになる。それが喜びなのか、使命を成し遂げた達成感からくるものなのか、ルフィナにもよく分からないのだけど。
「できたわ、どうかしら」
そんなアイーシャの声に顔を上げると、彼女が鏡を差し出していた。髪を結うのが終わったらしい。
鏡の中には、淡い紫色の髪を二つに結って下ろした自分の姿が映っている。金色の細いリボンを一緒に編み込んでくれており、シンプルながら華やかだ。
「ありがとう、可愛くしてもらえて嬉しいわ」
ルフィナが微笑むと、アイーシャは嬉しそうに笑った。一緒に耳がぴこぴこと動くのが愛らしくてたまらない。
「えへへ、頑張ったから頭を撫でてくれると嬉しいな、お義姉様」
甘えるように抱きついてきた可愛い義妹を受け止めて、ルフィナは彼女の頭をそっと撫でる。さらりとした髪の毛は指通りがいいし、指先が触れるとぴくりと動く耳がたまらなく愛おしい。ルフィナは何度も頭を撫で、ふわもふの耳を触ることも堪能した。
「何をしてるんだ、アイーシャ」
不意に背後からかかった声に、ルフィナは驚きつつ振り返った。
そこに立っていたのはカミルで、眉を顰めた少し不機嫌そうな顔をしている。
「あら、お兄様。随分と早いお迎えね。お義姉さまと早くお出かけしたくて、必死に仕事を終わらせてきたのかしら」
くすくすと揶揄うような声音に、カミルの眉間の皺がいっそう濃くなる。空気が険悪になったような気がして、ルフィナは間でハラハラと二人の顔を交互に見る。仲が良さそうに見えた二人だが、このまま喧嘩をしてしまうのだろうか。
ルフィナが不安な表情になったのに気づいたのか、カミルがハッとしたように目を見開いたあと少し表情を緩める。
「ルフィナ、少し早いが出かけないか。きみにアルデイルを案内したいんだ。式の準備に忙しくて、それどころじゃなかったから」
「えぇ、嬉しいです。ぜひ」
返事をしてからアイーシャの方を振り返ると、彼女はにっこりと笑って手を振った。
「どうぞ行ってらして、お義姉様。アルデイルを気に入ってくださると嬉しいわ」
「ありがとう、でももうすっかり気に入ってるわ」
そう言って、ルフィナは差し出されたカミルの手を取って立ち上がった。
部屋を出る前にカミルがふと思い出したように足を止め、アイーシャを振り返る。
「アイーシャも、ありがとう。ルフィナの髪、とてもよく似合っている」
「ふふん、そうでしょう。金色のリボンを使ったのがポイントよ。お兄様もデートのお礼にって、お義姉様に撫でてとおねだりするといいんじゃないかしら」
くすくすと笑いながらアイーシャが言った言葉の意味はルフィナには分からなかったが、カミルには何か通じたらしい。少し気まずそうな顔をしつつ、彼はそのまま小さくうなずいてルフィナを部屋の外へと促した。
ルフィナとは違って兄妹の仲は良く、ずっと姉が欲しかったのだとアイーシャは嬉しそうに微笑む。国王夫妻もルフィナをあたたかく歓迎してくれているし、家族仲が良いのは素敵なことだなとルフィナも幸せな気持ちになれた。
「お義姉様は、本当に綺麗ね。ふわふわのこの髪も、まるで花のような美しい色だわ」
ルフィナの髪を結いながら、アイーシャがうっとりとつぶやく。彼女の髪は顎下で切り揃えた長さなので、ほとんど髪を結ったことがないらしい。自分の髪は長いと鬱陶しいから短くしているけれど、誰かの髪を結って遊ぶのは大好きなのだという。交換条件に耳を撫でさせてくれると言われて、ルフィナが断れるはずもなかった。
「アイーシャの耳だってふわふわで可愛いし、ご両親とお揃いの金の髪も瞳も、とっても素敵よ」
「うちは家族皆同じ色なのよね。だからこそお義姉様の色に憧れちゃうんだわ。もしかしたらお兄様とお義姉様の子は、こんな綺麗な髪色をしているかもしれないわね。すごく楽しみ」
アイーシャの言葉に、ルフィナはさりげなく自分のお腹を撫でる。カミルとの子がここにいるかもしれないと思うと、胸がそわそわするような気持ちになる。それが喜びなのか、使命を成し遂げた達成感からくるものなのか、ルフィナにもよく分からないのだけど。
「できたわ、どうかしら」
そんなアイーシャの声に顔を上げると、彼女が鏡を差し出していた。髪を結うのが終わったらしい。
鏡の中には、淡い紫色の髪を二つに結って下ろした自分の姿が映っている。金色の細いリボンを一緒に編み込んでくれており、シンプルながら華やかだ。
「ありがとう、可愛くしてもらえて嬉しいわ」
ルフィナが微笑むと、アイーシャは嬉しそうに笑った。一緒に耳がぴこぴこと動くのが愛らしくてたまらない。
「えへへ、頑張ったから頭を撫でてくれると嬉しいな、お義姉様」
甘えるように抱きついてきた可愛い義妹を受け止めて、ルフィナは彼女の頭をそっと撫でる。さらりとした髪の毛は指通りがいいし、指先が触れるとぴくりと動く耳がたまらなく愛おしい。ルフィナは何度も頭を撫で、ふわもふの耳を触ることも堪能した。
「何をしてるんだ、アイーシャ」
不意に背後からかかった声に、ルフィナは驚きつつ振り返った。
そこに立っていたのはカミルで、眉を顰めた少し不機嫌そうな顔をしている。
「あら、お兄様。随分と早いお迎えね。お義姉さまと早くお出かけしたくて、必死に仕事を終わらせてきたのかしら」
くすくすと揶揄うような声音に、カミルの眉間の皺がいっそう濃くなる。空気が険悪になったような気がして、ルフィナは間でハラハラと二人の顔を交互に見る。仲が良さそうに見えた二人だが、このまま喧嘩をしてしまうのだろうか。
ルフィナが不安な表情になったのに気づいたのか、カミルがハッとしたように目を見開いたあと少し表情を緩める。
「ルフィナ、少し早いが出かけないか。きみにアルデイルを案内したいんだ。式の準備に忙しくて、それどころじゃなかったから」
「えぇ、嬉しいです。ぜひ」
返事をしてからアイーシャの方を振り返ると、彼女はにっこりと笑って手を振った。
「どうぞ行ってらして、お義姉様。アルデイルを気に入ってくださると嬉しいわ」
「ありがとう、でももうすっかり気に入ってるわ」
そう言って、ルフィナは差し出されたカミルの手を取って立ち上がった。
部屋を出る前にカミルがふと思い出したように足を止め、アイーシャを振り返る。
「アイーシャも、ありがとう。ルフィナの髪、とてもよく似合っている」
「ふふん、そうでしょう。金色のリボンを使ったのがポイントよ。お兄様もデートのお礼にって、お義姉様に撫でてとおねだりするといいんじゃないかしら」
くすくすと笑いながらアイーシャが言った言葉の意味はルフィナには分からなかったが、カミルには何か通じたらしい。少し気まずそうな顔をしつつ、彼はそのまま小さくうなずいてルフィナを部屋の外へと促した。
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