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14 甘く苦い初夜(カミル視点) ★

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 カミルの決死の宣言に、ルフィナはきょとんとした表情で首をかしげた。それはそうだろう、彼女が戸惑うのも当然だ。どう考えてもこの場で口にすべき言葉ではない。
 ルフィナが身じろぎするたびにいい香りがして、カミルの理性に働きかけてくる。ほとんど隠せていない薄布の下の肌を見ないようにと必死で顔を背け、カミルはお互いの種族差や体格差について説明した。
 それなのに、ルフィナは痛みなど平気だと笑い、あろうことか勢いよく夜着を脱ぎ捨てるとカミルを押し倒してきたのだ。
 閨の知識は一通り頭に入れていたとはいえ、カミルとて清い身。初めて目にする女性の身体は感動するほどに美しく、たわわな胸を押しつけられ、至近距離で妖艶に微笑みかけられれば、身体はあっという間に反応してしまう。
 重ねられた唇は信じられないほどに柔らかく、そして甘かった。
 年上の男らしくルフィナを優しくリードしようと思っていたのにとか、いやむしろ今日は抱かないと宣言したはずだとか、途切れがちの思考でそんなことを思いながら、気がつけばカミルはしっかりとルフィナを抱きしめて彼女の唇をむさぼっていた。
 甘い口づけに溺れ、どこかぼうっとした頭で、自らの身体の上にまたがるルフィナを見上げる。驚くほどに軽いのに、柔らかくてあたたかな身体。豊かな胸の頂には、薄紅色の小さな蕾。そこだけつんと尖って存在を主張しているのが愛らしい。そこに触れてみたい、舐めてみたいという欲望に耐えきれず、カミルは思わずごくりと唾を飲み込んだ。
 だが、カミルが彼女の胸に手を伸ばす前に、ルフィナはするりとカミルの上から退いてしまった。
 心地よい重みがなくなって少し残念に思ったのも束の間、彼女のほっそりとした指がカミルのガウンの前をくつろげる。そうすれば否応なしにルフィナの目の前に晒されるのは、痛いほどに反応しているカミル自身。
「まぁ。これがカミル様のカミル様……おっきい」
 まじまじと顔を近づけて確認されて、一気に羞恥心が湧き上がる。しかもあろうことかルフィナは、その可憐な口でカミルのものを愛するつもりだと言うのだ。
 艶やかな赤い唇をぺろりと舌で舐める仕草があまりに妖艶で、目が離せなくなる。
 この小さな口の中に自らの欲望をねじ込みたいという昏い願望と同時に、そんなことをすればこの美しい妖精のような彼女を汚してしまうという制止の声が頭の中で渦巻く。
 一瞬うっかり流されそうになったものの必死に理性を取り戻したはずが、気づけば再びルフィナが身体の上に乗っていた。しかも、用意しておいたのだという潤滑油を纏った手で自身の昂りを握られてしまえば、頭の中は一気に快楽に塗り替えられてしまう。
 ルフィナの細い指がカミル自身を握っているのを見て、今にも爆発しそうなくらいだった。ぬちぬちと響く水音が卑猥で、その音を彼女の手がたてているのだという事実にどうしようもないほどに興奮する。このままではルフィナの手の中で果ててしまうと思いかけた時、柔らかな手が離れていく。
「それでは、いきますわよ」
「え? ちょ、待て……」
 慌てて制止するものの、ルフィナは自らの身体の内にカミルを受け入れようとしていた。彼女自身も潤滑油を塗り込めてはいたが、全く慣らしていない身体に受け入れられるはずがない。
 案の定ルフィナは眉を顰め、涙まじりの悲鳴をあげて動かなくなった。ぽろりと彼女の白い頬を伝う雫を見た瞬間、全身が冷えていくような気持ちになった。
 だが、カミルも別の意味で泣き出しそうだった。
 だって、ほとんど先端だけとはいえルフィナの身体の中に挿入したのだ。明らかに入るとは思えない狭さだし、ぎゅうぎゅうとカミルのものを拒むように押し返してくるが、それすらカミルにとっては快楽に置き換えられてしまう。
 もっと奥に入り込みたい、全てをルフィナのぬくもりに包まれたいと腰が勝手に浮き上がりそうになるのを必死に堪える。これ以上は、間違いなくルフィナを傷つけてしまう。ただでさえ苦痛を伴うはずだというのに、慣らしもせずに最奥まで受け入れられるはずがないのだ。
 ルフィナを止めなければと思うのに、微かに触れ合った場所から痺れるような快楽を感じて頭がまともに働かない。彼女の身体をこれ以上傷つけないように、必死に自分からは動かないように耐えることしかカミルにはできなかった。
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