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13 大切にしたい(カミル視点)

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 ルフィナはやはり獣人族に嫌悪感はなく、むしろふわふわの毛を撫でることを喜んでいた。王太子であるカミルの耳を撫でるなど、大人になった今は親でもしないが、ルフィナにだけは触らせてやろうと決めた。
 うっとりとした表情でカミルの耳に触れたルフィナを思い出すと、それだけでカミルは少し鼓動が速くなる。
 妖精姫と称される美しい容姿はもちろんだが、悪意に晒されても折れなかった心の強さやまっすぐな眼差しに、カミルは惹かれたのだ。
 そんな彼女との結婚式は、カミルの人生において絶対に忘れられない日となった。
 アルデイルの伝統的な婚礼衣装に身を包んだルフィナは、それこそ本当に妖精かと思うほどに美しく可憐だった。
 真っ白な生地にたくさんの刺繍を施したドレスは彼女の身体のラインをより美しく彩ったし、ドレスと同じく繊細な刺繍を全面に施した薄いベールの向こうに見える彼女は、妖精のような儚さを一層引き立てた。
 はるばるホロウードから嫁いできた妖精姫を一目見ようと集まった国民たちは、ルフィナの神々しいまでの美しさにため息をつくことしかできなかった。
 もちろんカミルも、そんな彼女に終始見惚れていたし、ルフィナが柔らかな微笑みを向ける相手が自分であるということがたまらなく嬉しかった。
 アルデイルに来てからのルフィナは、恐らく本来の性格であろうのびのびとした表情を浮かべることが増え、カミルは彼女を幸せにすると心に誓った。
 だが、いざ初夜となると急に怖くなったのだ。
 カミルは獅子獣人ということもあり、かなり身体が大きい。ルフィナと並べば、彼女の頭のてっぺんがカミルの胸にかろうじて届く程度。細く華奢な体型のルフィナに対して、カミルは大柄で筋肉質だ。
 二人の体格差は明らかで、こんな繊細なガラス細工のようなルフィナを抱くことなどできないと思ったのだ。だって間違いなく、壊してしまう。
 初夜のために用意された薄い夜着を身に纏ったルフィナは、妖精のような可憐さと思わず息をのむほどの妖艶さを兼ね備えていた。
 今すぐにでも押し倒したい、白く柔らかそうな肌にむしゃぶりついて彼女に甘い声をあげさせたいと欲望が湧き上がるが、カミルは気合いでそれを堪えた。
 そして、震える声で告げたのだ。
『きみを愛すことはできない』と――。
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