2 / 67
2 身体は正直
しおりを挟む
嫁ぐからには相手の国のことを理解する必要があるだろうと、アルデイルに関する書物は色々と読んできた。だが、これまでホロウードはアルデイルとの交流が一切なかったので、獣人族に対する理解が十分かと言われると正直なところ自信はない。
それでも、お互いを知ろうとすることは大事だと思う。ルフィナとカミルの結婚は、両国の関係改善の第一歩となるはずだし、そのためには無事に初夜を遂行しなければならない。初夜に抱いてもらえなかった花嫁なんて、ルフィナの立場がないではないか。
「確かに私は人族ですし、カミル様のように耳も尻尾もありません。ですが、それを承知の上でこの結婚を承諾してくださったのでは?」
ずいっと詰め寄ると、カミルはたじろいだように視線を逸らした。さっきから彼は、全然ルフィナのことを見てくれない。
「そ、それはもちろん。アルデイルはホロウードと良好な関係を築きたいと思っているし、きみがこうして嫁いできてくれたことも本当に嬉しく思ってる」
「でしたら」
「でも、だめだ。俺は、きみを抱くつもりはない。痛い思いは……させたくないんだ」
カミルは頑なな表情で首を振る。それを見て、ルフィナの闘争心に火がついた。ここで引き下がったら、負けな気がする。なんとしても彼をその気にして、抱いてもらわねば。
「初めてが痛みを伴うことくらい、覚悟の上です。こう見えて私、案外痛みには強いんです。ですから心配ありませんわ」
「いや、無理だ。絶対壊してしまう……っ」
「壊れるだなんて。人の身体は、そんなに弱いものではないでしょう。カミル様が気遣ってくださるのは嬉しいですが、大丈夫ですって」
「こういうことは、急がなくてもいいと思う。俺はきみを大切にすると誓うし、時間をかけてだな……」
「王族でなければ、そうかもしれませんね。ですが、カミル様は王太子。お世継ぎを求められる立場なのは充分承知のことでしょう。つつがなく初夜を終えることは、当然だと思うのです。義務でもおざなりでも構いませんから、とにかく抱いてくださいませ」
さぁどうぞと夜着の胸元のリボンを解いてみせれば、薄く頼りないそれは微かな衣擦れの音を響かせて肌を露出させる。密かに自慢の豊かな胸が、ふるりと誘うように揺れた。
「……っ、いや、む、無理だ」
拒絶するようなことを言っておきながら、カミルの視線が確認するようにちらりと胸に向けられたのをルフィナは見た。たわわな胸を嫌う殿方は少数派だというが、彼もどうやら多数派だったようで少し安心する。
「触るのも嫌なほど、私のことがお嫌いですか?」
あえて眉尻を下げ、しゅんとした表情で上目遣いをしてみれば、カミルは慌てたように大きく首を横に振った。
「そ、そんなことはないが、でも……っ」
必死に視線を逸らそうとしているが、カミルの視線は何度もルフィナの胸に注がれる。それに、ガウンの下で彼のものが勃ち上がっているのが見える。愛することはできないと言っても、身体は正直に欲望を示しているのだろう。
祖国での閨の授業で見た張り型と同じだ……! と妙な感動を覚えつつ、ルフィナはカミルの方へにじり寄った。両腕で胸を寄せるようにすると、深くなった谷間に彼の視線が突き刺さる。
ガウンで隠れて全体は確認できないが、人族の平均サイズで作られたという張り型よりも大きく見える。やはり獣人は立派なものをお持ちのようだ。
この日のために、ルフィナは閨事について学んできた。もちろん経験はないが、男性を気持ちよくさせるための手段を中心にたくさん勉強したのだ。
「分かりました。カミル様が何もしないと仰るのなら、私の方からいかせていただきますね」
そう言って、ルフィナは夜着を勢いよく脱ぎ捨てると、カミルの両肩に手を置いて体重をかけて押し倒した。
それでも、お互いを知ろうとすることは大事だと思う。ルフィナとカミルの結婚は、両国の関係改善の第一歩となるはずだし、そのためには無事に初夜を遂行しなければならない。初夜に抱いてもらえなかった花嫁なんて、ルフィナの立場がないではないか。
「確かに私は人族ですし、カミル様のように耳も尻尾もありません。ですが、それを承知の上でこの結婚を承諾してくださったのでは?」
ずいっと詰め寄ると、カミルはたじろいだように視線を逸らした。さっきから彼は、全然ルフィナのことを見てくれない。
「そ、それはもちろん。アルデイルはホロウードと良好な関係を築きたいと思っているし、きみがこうして嫁いできてくれたことも本当に嬉しく思ってる」
「でしたら」
「でも、だめだ。俺は、きみを抱くつもりはない。痛い思いは……させたくないんだ」
カミルは頑なな表情で首を振る。それを見て、ルフィナの闘争心に火がついた。ここで引き下がったら、負けな気がする。なんとしても彼をその気にして、抱いてもらわねば。
「初めてが痛みを伴うことくらい、覚悟の上です。こう見えて私、案外痛みには強いんです。ですから心配ありませんわ」
「いや、無理だ。絶対壊してしまう……っ」
「壊れるだなんて。人の身体は、そんなに弱いものではないでしょう。カミル様が気遣ってくださるのは嬉しいですが、大丈夫ですって」
「こういうことは、急がなくてもいいと思う。俺はきみを大切にすると誓うし、時間をかけてだな……」
「王族でなければ、そうかもしれませんね。ですが、カミル様は王太子。お世継ぎを求められる立場なのは充分承知のことでしょう。つつがなく初夜を終えることは、当然だと思うのです。義務でもおざなりでも構いませんから、とにかく抱いてくださいませ」
さぁどうぞと夜着の胸元のリボンを解いてみせれば、薄く頼りないそれは微かな衣擦れの音を響かせて肌を露出させる。密かに自慢の豊かな胸が、ふるりと誘うように揺れた。
「……っ、いや、む、無理だ」
拒絶するようなことを言っておきながら、カミルの視線が確認するようにちらりと胸に向けられたのをルフィナは見た。たわわな胸を嫌う殿方は少数派だというが、彼もどうやら多数派だったようで少し安心する。
「触るのも嫌なほど、私のことがお嫌いですか?」
あえて眉尻を下げ、しゅんとした表情で上目遣いをしてみれば、カミルは慌てたように大きく首を横に振った。
「そ、そんなことはないが、でも……っ」
必死に視線を逸らそうとしているが、カミルの視線は何度もルフィナの胸に注がれる。それに、ガウンの下で彼のものが勃ち上がっているのが見える。愛することはできないと言っても、身体は正直に欲望を示しているのだろう。
祖国での閨の授業で見た張り型と同じだ……! と妙な感動を覚えつつ、ルフィナはカミルの方へにじり寄った。両腕で胸を寄せるようにすると、深くなった谷間に彼の視線が突き刺さる。
ガウンで隠れて全体は確認できないが、人族の平均サイズで作られたという張り型よりも大きく見える。やはり獣人は立派なものをお持ちのようだ。
この日のために、ルフィナは閨事について学んできた。もちろん経験はないが、男性を気持ちよくさせるための手段を中心にたくさん勉強したのだ。
「分かりました。カミル様が何もしないと仰るのなら、私の方からいかせていただきますね」
そう言って、ルフィナは夜着を勢いよく脱ぎ捨てると、カミルの両肩に手を置いて体重をかけて押し倒した。
155
お気に入りに追加
388
あなたにおすすめの小説
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる