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2 身体は正直
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嫁ぐからには相手の国のことを理解する必要があるだろうと、アルデイルに関する書物は色々と読んできた。だが、これまでホロウードはアルデイルとの交流が一切なかったので、獣人族に対する理解が十分かと言われると正直なところ自信はない。
それでも、お互いを知ろうとすることは大事だと思う。ルフィナとカミルの結婚は、両国の関係改善の第一歩となるはずだし、そのためには無事に初夜を遂行しなければならない。初夜に抱いてもらえなかった花嫁なんて、ルフィナの立場がないではないか。
「確かに私は人族ですし、カミル様のように耳も尻尾もありません。ですが、それを承知の上でこの結婚を承諾してくださったのでは?」
ずいっと詰め寄ると、カミルはたじろいだように視線を逸らした。さっきから彼は、全然ルフィナのことを見てくれない。
「そ、それはもちろん。アルデイルはホロウードと良好な関係を築きたいと思っているし、きみがこうして嫁いできてくれたことも本当に嬉しく思ってる」
「でしたら」
「でも、だめだ。俺は、きみを抱くつもりはない。痛い思いは……させたくないんだ」
カミルは頑なな表情で首を振る。それを見て、ルフィナの闘争心に火がついた。ここで引き下がったら、負けな気がする。なんとしても彼をその気にして、抱いてもらわねば。
「初めてが痛みを伴うことくらい、覚悟の上です。こう見えて私、案外痛みには強いんです。ですから心配ありませんわ」
「いや、無理だ。絶対壊してしまう……っ」
「壊れるだなんて。人の身体は、そんなに弱いものではないでしょう。カミル様が気遣ってくださるのは嬉しいですが、大丈夫ですって」
「こういうことは、急がなくてもいいと思う。俺はきみを大切にすると誓うし、時間をかけてだな……」
「王族でなければ、そうかもしれませんね。ですが、カミル様は王太子。お世継ぎを求められる立場なのは充分承知のことでしょう。つつがなく初夜を終えることは、当然だと思うのです。義務でもおざなりでも構いませんから、とにかく抱いてくださいませ」
さぁどうぞと夜着の胸元のリボンを解いてみせれば、薄く頼りないそれは微かな衣擦れの音を響かせて肌を露出させる。密かに自慢の豊かな胸が、ふるりと誘うように揺れた。
「……っ、いや、む、無理だ」
拒絶するようなことを言っておきながら、カミルの視線が確認するようにちらりと胸に向けられたのをルフィナは見た。たわわな胸を嫌う殿方は少数派だというが、彼もどうやら多数派だったようで少し安心する。
「触るのも嫌なほど、私のことがお嫌いですか?」
あえて眉尻を下げ、しゅんとした表情で上目遣いをしてみれば、カミルは慌てたように大きく首を横に振った。
「そ、そんなことはないが、でも……っ」
必死に視線を逸らそうとしているが、カミルの視線は何度もルフィナの胸に注がれる。それに、ガウンの下で彼のものが勃ち上がっているのが見える。愛することはできないと言っても、身体は正直に欲望を示しているのだろう。
祖国での閨の授業で見た張り型と同じだ……! と妙な感動を覚えつつ、ルフィナはカミルの方へにじり寄った。両腕で胸を寄せるようにすると、深くなった谷間に彼の視線が突き刺さる。
ガウンで隠れて全体は確認できないが、人族の平均サイズで作られたという張り型よりも大きく見える。やはり獣人は立派なものをお持ちのようだ。
この日のために、ルフィナは閨事について学んできた。もちろん経験はないが、男性を気持ちよくさせるための手段を中心にたくさん勉強したのだ。
「分かりました。カミル様が何もしないと仰るのなら、私の方からいかせていただきますね」
そう言って、ルフィナは夜着を勢いよく脱ぎ捨てると、カミルの両肩に手を置いて体重をかけて押し倒した。
それでも、お互いを知ろうとすることは大事だと思う。ルフィナとカミルの結婚は、両国の関係改善の第一歩となるはずだし、そのためには無事に初夜を遂行しなければならない。初夜に抱いてもらえなかった花嫁なんて、ルフィナの立場がないではないか。
「確かに私は人族ですし、カミル様のように耳も尻尾もありません。ですが、それを承知の上でこの結婚を承諾してくださったのでは?」
ずいっと詰め寄ると、カミルはたじろいだように視線を逸らした。さっきから彼は、全然ルフィナのことを見てくれない。
「そ、それはもちろん。アルデイルはホロウードと良好な関係を築きたいと思っているし、きみがこうして嫁いできてくれたことも本当に嬉しく思ってる」
「でしたら」
「でも、だめだ。俺は、きみを抱くつもりはない。痛い思いは……させたくないんだ」
カミルは頑なな表情で首を振る。それを見て、ルフィナの闘争心に火がついた。ここで引き下がったら、負けな気がする。なんとしても彼をその気にして、抱いてもらわねば。
「初めてが痛みを伴うことくらい、覚悟の上です。こう見えて私、案外痛みには強いんです。ですから心配ありませんわ」
「いや、無理だ。絶対壊してしまう……っ」
「壊れるだなんて。人の身体は、そんなに弱いものではないでしょう。カミル様が気遣ってくださるのは嬉しいですが、大丈夫ですって」
「こういうことは、急がなくてもいいと思う。俺はきみを大切にすると誓うし、時間をかけてだな……」
「王族でなければ、そうかもしれませんね。ですが、カミル様は王太子。お世継ぎを求められる立場なのは充分承知のことでしょう。つつがなく初夜を終えることは、当然だと思うのです。義務でもおざなりでも構いませんから、とにかく抱いてくださいませ」
さぁどうぞと夜着の胸元のリボンを解いてみせれば、薄く頼りないそれは微かな衣擦れの音を響かせて肌を露出させる。密かに自慢の豊かな胸が、ふるりと誘うように揺れた。
「……っ、いや、む、無理だ」
拒絶するようなことを言っておきながら、カミルの視線が確認するようにちらりと胸に向けられたのをルフィナは見た。たわわな胸を嫌う殿方は少数派だというが、彼もどうやら多数派だったようで少し安心する。
「触るのも嫌なほど、私のことがお嫌いですか?」
あえて眉尻を下げ、しゅんとした表情で上目遣いをしてみれば、カミルは慌てたように大きく首を横に振った。
「そ、そんなことはないが、でも……っ」
必死に視線を逸らそうとしているが、カミルの視線は何度もルフィナの胸に注がれる。それに、ガウンの下で彼のものが勃ち上がっているのが見える。愛することはできないと言っても、身体は正直に欲望を示しているのだろう。
祖国での閨の授業で見た張り型と同じだ……! と妙な感動を覚えつつ、ルフィナはカミルの方へにじり寄った。両腕で胸を寄せるようにすると、深くなった谷間に彼の視線が突き刺さる。
ガウンで隠れて全体は確認できないが、人族の平均サイズで作られたという張り型よりも大きく見える。やはり獣人は立派なものをお持ちのようだ。
この日のために、ルフィナは閨事について学んできた。もちろん経験はないが、男性を気持ちよくさせるための手段を中心にたくさん勉強したのだ。
「分かりました。カミル様が何もしないと仰るのなら、私の方からいかせていただきますね」
そう言って、ルフィナは夜着を勢いよく脱ぎ捨てると、カミルの両肩に手を置いて体重をかけて押し倒した。
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