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いつだって守ってくれる人

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 優しく降ってくるキスを受け入れながら、シェイラはうっとりと目を閉じた。頬から耳へ、そして首へと移動していった唇は、執拗なほどに首筋に触れる。ここに番いの証を刻むのだと教えられるようなその口づけに、シェイラは吐息混じりの声を抑えることができなかった。
 こうしてただ唇が触れるだけで背筋がぞくりとするほどの快楽を覚えているのに、噛まれたりしたらどうなってしまうのだろう。
 まだ何もしていないはずなのに自分だけ呼吸を乱しているのが恥ずかしくて、シェイラは思わず口元を押さえた。それに気づいたイーヴが、小さく笑ってその手を握りしめる。
「顔を隠さないで、シェイラ」
「んっ……だって、なんか私だけ興奮してるみたいで恥ずかし……」
「俺は、冷静であろうと必死に堪えてるんだって」
「そんなの必要ないです。イーヴが思うままに、求めてほしいのに」
「シェイラは、そうやってすぐに俺の理性を崩しにかかる」
 眉を下げて笑ったイーヴは、握ったシェイラの手を引き寄せると、指先に口づけた。
「……そういえば」
 ふと何かを思い出したような顔をしたイーヴは、もう一度シェイラの指先に唇を押し当てた。
「前に、こうしてシェイラの指にキスをしたことを覚えてる?」
「怪我をした時のこと?」
 思い出しつつ首をかしげると、イーヴがうなずいた。
「そう。あの時、無意識にシェイラに保護魔法をかけたんだ。早く傷が治るようにと、なんとなくおまじないのような意味合いで」
 竜族にとって保護魔法はラグノリアが思うほど特別なものではなく、親が子に幸運を祈ってかけるくらいに身近なものだという。同じような意味合いでイーヴもシェイラに保護魔法をかけたと知らされて、シェイラはくすぐったさに笑った。
「おかげで傷の治りが早かったのかも」
「それだけじゃない、保護魔法はどうやら本当にシェイラを守ったみたいなんだ」
「そうなの?」
 もう傷跡すら残っていない指先を撫でて、イーヴもうなずく。 
「ルベリアからシェイラとはぐれたと連絡があって、探しに行こうとしていた時にシェイラの声が聞こえたような気がして。それは恐らくこのバングルのおかげだったとは思うんだけど」
「そっか、イーヴの鱗から作ったバングルですもんね」
「うん。だからそれを頼りに探したら、ベルナデットの屋敷にいることが分かった」
 シェイラの左腕にあるバングルに触れながら、イーヴはあの時のことを思い出したのか顔を顰める。
「思い出したくもないが、あの時……淫紋をつけられそうになっただろう」
「うん、だけど何かが弾けたような音がして……」
 シェイラは眉を寄せつつ記憶を辿る。必死に抵抗していたのは確かだけど、シェイラが何かしたわけでもないのに淫紋札を貼ろうとした男は手を傷つけていた。
 そのことを説明すると、イーヴもうなずいた。
「それが保護魔法だ。シェイラを守ろうと、魔法が発動したんだ。あれがなかったらと思うと、恐ろしくてたまらない」
「イーヴが守ってくれたんですね。ありがとう」
「結局、媚薬は飲まされてしまったけど」
「解毒剤を飲ませてくれたし、イーヴは私を助けてくれたもの。……抱いてくれなかったのは少し悲しかったけど」
 少し拗ねたように唇を尖らせると、苦笑したイーヴがその唇を指先で突く。
「薬のせいであんなことになってる状況で、抱けるはずがないだろう」
「そうですね。やっぱり初めてのことは、ちゃんと覚えておきたいもの」
 笑いながら、シェイラは目の前のイーヴの背中に手を回した。
「今日は、ちゃんと覚えていられます」 
 だから、と囁くと、抱きしめる腕が強くなった。


 
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