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ぬくもり

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 何度も何度も、角度を変えて重ねられる唇を受け入れながら、シェイラは思わずイーヴの服を掴んだ。
 最初はただ触れるだけだったはずの口づけは、気づけばまるで食べられてしまうのではと思うほどに深い。呼吸すら奪うほどに深く侵入してきた舌に最初は驚いたものの、思わず漏れそうになった声ごとイーヴの舌が絡め取っていく。
 シェイラもぎこちなく舌を差し出してみれば、それに応えるようにイーヴが強く吸いあげる。
 いつしかシェイラは、その甘く官能的な触れ合いに夢中になっていた。
 だけど、キスを交わすたびに身体の力がどんどん抜けていく。唇が離れる合間に息継ぎをするけれど、それだけでは足りなくて呼吸が荒くなる。
「ん……っ待っ、イーヴ……、息、苦し……」
「ごめん、つい」
 厚い胸板を叩いて訴えると、慌てたようにイーヴが離れていく。呼吸を整えていると、困ったようなため息が降ってきた。
「ずっと我慢してたから、自制が効かなくなりそうだ」
「我慢?」
「隣で気持ちよさそうに眠ってるシェイラに、どれだけ触れたかったことか。毎晩、忍耐力を試されてたよ」
「我慢なんてしなくて良かったのに。私も、ずっとこうしたかったです」
 ぎゅっと抱きついて胸元に頬を擦り寄せると、小さく笑ったイーヴが頭を撫でてくれた。そのぬくもりに微笑みつつ、シェイラはイーヴを見上げた。
「あのね、前にイーヴは言ったでしょう。性行為というのは好きな相手とするものだって」
「え? あぁ、そうだな」
「だから、私はイーヴとしたいです。痛いのだって、平気です。こう見えて私、結構丈夫なんですよ」
 胸を張ってみせると、苦笑を浮かべたイーヴと目が合う。
「それはまた、おいおいな」
「……だめなの?」
「まずはちゃんと食事をして、睡眠をとれ。昨日から寝てないんだろう」
 その言葉に急に眠気を感じて、シェイラは大きな欠伸をした。お腹も空いているけれど、それより先に眠りたい。
「確かにそうですね、万全の態勢で臨まないと。睡眠も食事も大事だって、身に沁みました」
「そこまで気負わなくてもいいけど」
 笑いながら、イーヴが横になるようにと促す。頭を撫でてくれた手を、シェイラは離れて行かないように捕まえた。
「眠るまで、そばにいてくれますか?」
「もちろん。どこにも行かないから」
 その言葉を示すようにイーヴは指を絡めて手を繋いでくれる。ぬくもりを逃さないようにぎゅうっと握りしめて、シェイラは目を閉じた。一人だとあんなに寂しくて心細くて、凍えてしまうほどに冷たかったのに、イーヴのぬくもりがあるだけで安心できる。
 握りしめた手に一度口づけを落として、シェイラはあっという間に眠りに落ちた。
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