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3 きっと見せるだけでは済まない。

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「……本当、良かった」
 はぁっと深いため息をついて、井阪が顔を覆う。どうやら誤解が解けたようで、美梨も力が抜けて同じようにため息をついた。
「好きな子がこんな下着を……ってドキドキすると同時にすげぇ不安になって」
「え……」
 美梨は思わず小さく息をのんだ。好きな子、と言ったのは聞き間違いではないだろうか。
 微かに漏れた美梨の声に反応したのか、井阪がゆっくりと美梨の方を見た。
「ずっと、美梨のこと好きだったんだ。勇気を出して告白しようって思ってた矢先にこんなの見ちゃって、ちょっと冷静さを失っちゃったけど」
「嘘、本当に……?」
「美梨が越してきた時からずっと気になってた。一緒に映画の話できるのも楽しかったし、仕事忙しそうなのにいっつも頑張ってる美梨のことすごいなって思ってる」
 言葉を切った井阪は、美梨をじっと見つめた。
「好きです。俺と付き合ってくれませんか」
「……っ」
 直球でぶつけられたまっすぐな想いに、美梨は小さく息をのんだ。
「わ、私もずっと井阪さんのこと……好き、でした」
 震える声で想いを告げると、井阪と目が合った。見つめ合って思わず二人で小さく笑いあったあと、井阪が軽く両腕を広げるから、その意図を理解した美梨は勢いよく彼の胸の中へと飛び込んだ。
 ぎゅうっと抱きしめられたあと、そっと頬に触れた手に美梨はゆっくりと顔を上げて目を閉じる。
 優しく重なった唇は、少しひんやりとしていた。

 
「ん……、ふぁ」
 気づけばキスはどんどん深さを増していて、美梨は力の抜けた身体を井阪に預けていた。しっかりと抱きしめて支えてくれる腕の強さに、ずっとこうして欲しかったのだと思わず笑みがこぼれる。
「井阪さ……んんっ、もっと……」
貴士たかし。俺のことも名前で呼んで、美梨」
「えっと……あの、貴士……んっ」
 名前を呼んだ瞬間深く唇を重ねられて、美梨はその甘さに酔いしれた。舌を絡め合うのが心地よくて、美梨も積極的に応えていく。
 
「美梨、部屋の中入ってもいい?」
 耳元で囁くのは、今まで聞いたことないほどに低く掠れた色気のある声。
 腰砕けになりそうで、声も出せずこくこくとうなずいた美梨の身体を軽々と抱き上げると、貴士はそのまま廊下を進んだ。部屋が隣同士だし間取りは一緒なのだろう、彼は迷うことなくリビングを抜けて寝室へと向かう。
 そっとベッドの上に降ろされて、両腕で囲うようにして見下ろされると、それだけで心臓が口から飛び出てきそうなほどだ。
「美梨、顔真っ赤」
 くすりと笑った貴士が指先で頬を撫でる。恥ずかしくなって、美梨は思わず手に持ったままだった下着の入った箱を顔の前に持ってきて表情を隠す。
「ん、これ着たいって?」
「ち、違……っ!」
 悪戯っぽく笑った貴士が美梨の手から箱を奪い取るから、慌てて首を振って取り返そうとするものの、高く手を挙げられたら届かない。
「どんなの買ったのか見たいな」
「絶対ドン引きされるもん……」
「引かないって。むしろ興奮する」
 お願い、と耳元で囁かれたら美梨も抵抗する気力をなくしてしまう。
「見せるだけ、だからね」
 念押すようにつぶやいて、美梨はゆっくりと箱を開けるために身体を起こした。
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