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失った純潔と、精霊との別離 ★
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「あーあ、蕩けきった顔しちゃって。巫女姫だなんて祭り上げられてても、あんたも所詮はただの女だ」
ようやく胸から唇を離したザフィルが呆れたような声で笑うのを、ファテナは遠いところで聞く。頭の中に靄がかかったかのようにぼうっとしていて、何も考えることができない。
「すごいな、あんた。胸だけで何回イった? 香油の効果もあるとはいえ、めちゃくちゃ敏感だな」
一方的に快楽を与えられて動けないファテナの身体を、ザフィルが抱き寄せる。
イったとは、何のことだろう。彼が何を言っているのかも、よく分からない。
力の入らないファテナの身体の上を、ザフィルの指が我が物顔で滑っていく。揶揄うような手つきでまた胸の先を摘まれて、その刺激だけでファテナはぴくぴくと身体を震わせた。
「随分とぐったりしてるけど、まだ始まったばかりだぞ。休んでる暇はない」
そう言ってザフィルがファテナの肌に纏わりつく衣服の残骸を剥ぎ取って床に落とす。こんな男の前で余すところなく肌を晒していることに、抵抗しなければと思うのに、身体が重くて動かせない。
「精霊たちが痺れをきらす前に、全てを終わらせないといけないんだけどな。あんたの反応が楽しすぎて、つい時間を忘れてしまう」
ザフィルが小さくつぶやきながらファテナの膝を掴む。そのまま大きく割り広げられて、さすがにファテナも悲鳴をあげた。こんな場所を人目に晒していいはずがない。
「や……、こんなこと、許されるはず……っ」
「その気丈さは嫌いじゃないが、おとなしくしてなって。体力を消耗するだけだから、無駄な抵抗はしない方がいい」
「やだ……っ触らな……いやぁっ」
「……嘘だな、こんなにとろとろになってて嫌は通じない」
ザフィルの指先が、ゆるゆると秘部をなぞる。まだぴたりと閉じた花弁の内側から、とろりと蜜が垂れていることに気づいて、ザフィルの唇が弧を描いた。
その蜜を掬い上げて花弁の上に眠る小さな蕾に塗り込めるようにすると、その瞬間ファテナの身体が大きく跳ねた。
「ひ……ぁっ」
「ほら、逃げるなって。気持ちいいだろう」
「やだ、そこ嫌……っ」
「嫌なはずない。こんなにぷっくりと腫らしてるのに。あぁそうだ、ここを舐めたら、あんたはどんな反応をするんだろうな」
試してみようかとつぶやいて、ザフィルがファテナの脚の間に顔を近づける。ふうっと吐息を吹きかけられて、その刺激だけでファテナは腰をぴくぴくと震わせてしまう。
ぬるりとしたものが秘部を撫で上げて、それがザフィルの舌だと認識して強烈な羞恥に襲われた。
逃げなければと浮かした腰を抱え込むように抑えられて、舌はまるで蛇のような動きで這い回る。
「ひぁ、い……や、んあぁっ」
嫌だと叫んだはずだったのに、ザフィルの舌が触れた場所が痺れたようになって、頭の中がその感覚を追うことしかできなくなる。
未知の感覚だけど、身体はもっとそれが欲しいと勝手に疼き出す。
「そうそう、そうやって素直に快楽だけ受け止めてたらいい」
笑ったザフィルが、蜜に塗れた蕾にそっと歯を立てた。その瞬間、ファテナの身体はがくがくと大きく震えたあと、ぐったりと弛緩した。
「もうイったか。結構あっという間だったな。まぁ、まだまだ休ませる気はないけど」
一度口元を拭ったザフィルが、再びファテナの秘部に顔を埋める。ひくひくと余韻に震える花弁を舌で割り開くようにして、あふれる蜜を吸い上げるように啜られる。
「や、あぁっ、むり、もうやめ……っ、おかしくなっちゃう……っ」
「うん、おかしくなればいい。何もかも分からなくなるくらい、溺れてしまえ」
「い……ぁ、だめ、また何かきちゃ……ぁ、ふあぁっ」
「ほらまたイった」
くすくすと笑うザフィルの声がどこか遠くで聞こえる。
白く靄のかかったような頭では、何も考えることができない。
逃げなければ、抵抗しなければと思う気持ちは確かにあるのに、その考えがまとまる前に、ザフィルの舌が、指が、ファテナから思考を奪っていく。
はくはくと陸に打ち上げられた魚のように、ファテナは寝台の上で荒い呼吸を繰り返す。
重く怠い身体は起き上がるどころか手足を動かすことすら億劫だ。時々びくんと身体を震わせながら、ファテナはぐったりとして目を伏せる。
あの鋭く激しい感覚が絶頂することだと教えられ、あれから数えきれないほどに何度も、ファテナはそれを身体に教え込まれた。
抵抗しようとしても、拘束された身体ではほとんど身動きできなくて、結局彼に与えられる快楽を受け止め続けることしかできなかった。
瞬きをすると、涙が一雫こぼれ落ちて頬を滑っていった。頬には幾筋も涙の跡が残っているし、たくさん泣いたから目が重たい。だけど、それが抵抗して流した涙なのか、快楽に追い詰められて流した涙なのか分からない。
「大分解れたかな」
つぶやいて、ザフィルが汗ばんだファテナの頬に貼りつく髪を除けると、そのまま頭を撫でた。酷いことをされているはずなのに、触れる手はとても優しくてあたたかい。
思わずそれを黙って受け入れそうになって、ファテナは慌てて首を振った。
「もう、充分でしょう。これ以上、辱めるのはやめて」
「この状況でやめろとか、何の冗談だよ」
ファテナの訴えを鼻で笑って、ザフィルは手早く残りの服も脱ぎ捨てていく。引き締まった身体はあちこちに傷跡が残っていて、彼が戦いの中に身を置いて生きてきたことを示している。
「あんまじろじろ見んなよ」
そう言いながら、ザフィルはファテナの上に覆いかぶさる。秘部に押し当てられているものの熱さと硬さに、ファテナは小さく息をのんだ。無駄だと分かっていても、ずり上がって逃れようとしてしまう。
そんなファテナの抵抗を、ザフィルは腰を掴むだけで軽々と封じた。
「お願い、もう、許して……」
弱々しい声でファテナが懇願した瞬間、部屋が小刻みに揺れた。地震かと窓の方に目をやったファテナとは反対に、ザフィルは忌々しそうに小さく舌打ちする。
「チッ……、諦めの悪いやつらだな」
彼の言葉の意味が分からず眉を顰めたファテナに視線を向けることなく、ザフィルは窓の外に向かって勝ち誇った笑みを見せる。
「もう、こいつはおまえらのものにはならない。そこでこいつが純潔を失うのを、指を咥えて見てろ」
誰に向けてのものか分からない宣言のあと、ザフィルはファテナの脚を肩に担ぐようにした。そして、勢いよく腰を押しつけた。
「く……あ、あぁっ……」
予想したような痛みはなかったものの、衝撃で息が詰まる。身体の中に感じる異物感と内臓を押し上げられるような感覚に、深く呼吸をすることが怖い。
浅く息をするファテナの耳に、部屋の外で精霊の叫び声が聞こえたような気がした。
ハッとして窓の外に視線を向けようとすると、ザフィルの手がそれを止めるように頬を押さえた。
微かに聞こえるのは、水の精霊の声だろうか。いつも穏やかだったはずのその声は、怒り狂っているような響きだ。だがそれも、どんどん遠く小さくなっていく。
遠ざかるその声に耳を傾けようとするものの、ザフィルのものに身体の内側を擦り上げられると全身が震えるような快楽に襲われて集中できない。先程何度も教え込まれた絶頂の波が、少しずつ近づいてきているのを感じる。
「すご……キツい、な」
眉を寄せて、ザフィルが吐息混じりにつぶやく。ぐるりと中で円を描くように腰を押しつけながら、ザフィルはファテナの髪を一房掬い上げた。そして嬉しそうに笑う。
「あぁ、色が、変わってきたな。本来の色は――紺か。綺麗な色だ」
「え……?」
揺さぶられて呼吸を乱しながら、ファテナはザフィルの手の方に視線を向ける。
真っ白だったはずのファテナの髪は、毛先から青みがかった黒に変化していた。ザフィルが腰を打ちつけるたびに、まるで反応するかのように色が変わっていく。
精霊の力が宿ると言われたその髪の変化に、ファテナはどうしようもない不安を感じて怯えたようにザフィルを見上げた。
「髪、が……」
「あんたの本来の髪の色は、真っ白じゃない。精霊に食われて色を失っていただけだ」
「精霊、に?」
目を瞬くファテナの髪をもう一度掬い上げて、ザフィルはうなずく。その髪は、すでに中程まで色が変わっている。
「巫女姫だなんて祭り上げられてたけど、あんたは精霊に差し出された生贄だ。精霊は無垢なものを好むから、あんたの色を食って白く染めた。そして今度は少しずつ命を食らってる」
「そんな、そんなわけ……っあ、んっ」
首を振って反論しようとするのを封じるかのように、ザフィルが強くファテナの身体を突き上げた。
「あんたも精霊が怒るのを聞いただろう。あいつらは、あんたを餌としか思ってない。あんたを食わせておけば、精霊は他の人間に悪さをしないからな。ウトリド族は、そうやって精霊を手懐けてきた」
「でも、だって、精霊は私に力を貸してくれる……っ」
「あぁ、そうだな。だけど力を使った分だけ、精霊はあんたの命を食らってる。精霊は対価なしに力を貸すことはない。俺たちや他の部族が滅多に精霊の力を借りようとしないのは、対価に何を奪われるか分からないからだ。ウトリド族は、精霊お気に入りのあんたを差し出して、その力を使わせてるに過ぎない」
「嘘よ、そんな……」
首を振るたび、敷布の上に髪が広がっていく。その髪はもう、半分以上色を変えている。
「なら聞くが、精霊に愛された一族と呼ばれるウトリド族の中で、あんた以外に精霊の力を使えたか? あんたの妹は、長である父親は?」
「それは……」
ザフィルの言葉に、ファテナは唇を震わせる。確かに両親も妹もファテナに精霊の力を使うよう命令するばかりで、自分たちで何かをすることは一度だってなかった。そのことを両親に尋ねると、酷く叱られたことまで思い出してしまう。ファテナが一番精霊の力をうまく使うことができるのだから、長の娘として貢献するのは当然だと言われていたのだ。
そんなファテナの表情を見て、ザフィルは当然だというようにうなずいた。
「いないだろう。あいつらは、あんたに精霊の力を使わせるだけで、自分たちは何もしていない。ウトリド族は精霊に愛されてる? 笑わせるなよ、精霊が気に入ってたのはあんただけだ。それも餌としてな」
吐き捨てるようなザフィルの言葉に、ファテナは首を振ることしかできない。自分が今まで信じてきたものを否定されて、心のどこかにひびが入ったような気がする。
幼い頃、精霊に選ばれたと父親に告げられて、その日から家族の中でファテナだけが別で暮らすことになった。
孤独な日々を癒してくれたのは、そばに感じる精霊の笑い声。精霊の力を使えばその時だけは父が褒めてくれ、食事を与えられた。役に立てるなら、褒めてもらえるならと必死で精霊に祈り続けた日々は、間違っていたのだろうか。
「精霊は、もうあんたを餌としては見ない。あいつらからすれば、俺によって穢された存在だからな。あのまま食われ続けていれば、あんたは数年も経たないうちに死んでいただろうな」
ゆるゆると腰を動かしながら、ザフィルがファテナの髪に触れた。満足そうに目を細め、色が全て変わったことを教えられる。
「仕上げは、胎の中で子種を受け止めることだ。それで精霊との縁は、完全に切れる」
「え、待っ……、や、あぁんっ」
言われた言葉を受け止める前に、ザフィルの腰の動きが速くなる。大事な話をしていたはずなのに、激しく突き上げられて何も考えられなくなっていく。
「だめ、ザフィル……止まっ……あぁぁぁっ」
「このタイミングで名前を呼ばれて、止まれる訳がないだろ、ファテナ」
どこか嬉しそうな声で彼がつぶやいて、更に強く腰を押しつける。身体の奥深くで熱いものが弾けたのを、ファテナは熱に浮かされたような頭のどこかで感じとっていた。
ようやく胸から唇を離したザフィルが呆れたような声で笑うのを、ファテナは遠いところで聞く。頭の中に靄がかかったかのようにぼうっとしていて、何も考えることができない。
「すごいな、あんた。胸だけで何回イった? 香油の効果もあるとはいえ、めちゃくちゃ敏感だな」
一方的に快楽を与えられて動けないファテナの身体を、ザフィルが抱き寄せる。
イったとは、何のことだろう。彼が何を言っているのかも、よく分からない。
力の入らないファテナの身体の上を、ザフィルの指が我が物顔で滑っていく。揶揄うような手つきでまた胸の先を摘まれて、その刺激だけでファテナはぴくぴくと身体を震わせた。
「随分とぐったりしてるけど、まだ始まったばかりだぞ。休んでる暇はない」
そう言ってザフィルがファテナの肌に纏わりつく衣服の残骸を剥ぎ取って床に落とす。こんな男の前で余すところなく肌を晒していることに、抵抗しなければと思うのに、身体が重くて動かせない。
「精霊たちが痺れをきらす前に、全てを終わらせないといけないんだけどな。あんたの反応が楽しすぎて、つい時間を忘れてしまう」
ザフィルが小さくつぶやきながらファテナの膝を掴む。そのまま大きく割り広げられて、さすがにファテナも悲鳴をあげた。こんな場所を人目に晒していいはずがない。
「や……、こんなこと、許されるはず……っ」
「その気丈さは嫌いじゃないが、おとなしくしてなって。体力を消耗するだけだから、無駄な抵抗はしない方がいい」
「やだ……っ触らな……いやぁっ」
「……嘘だな、こんなにとろとろになってて嫌は通じない」
ザフィルの指先が、ゆるゆると秘部をなぞる。まだぴたりと閉じた花弁の内側から、とろりと蜜が垂れていることに気づいて、ザフィルの唇が弧を描いた。
その蜜を掬い上げて花弁の上に眠る小さな蕾に塗り込めるようにすると、その瞬間ファテナの身体が大きく跳ねた。
「ひ……ぁっ」
「ほら、逃げるなって。気持ちいいだろう」
「やだ、そこ嫌……っ」
「嫌なはずない。こんなにぷっくりと腫らしてるのに。あぁそうだ、ここを舐めたら、あんたはどんな反応をするんだろうな」
試してみようかとつぶやいて、ザフィルがファテナの脚の間に顔を近づける。ふうっと吐息を吹きかけられて、その刺激だけでファテナは腰をぴくぴくと震わせてしまう。
ぬるりとしたものが秘部を撫で上げて、それがザフィルの舌だと認識して強烈な羞恥に襲われた。
逃げなければと浮かした腰を抱え込むように抑えられて、舌はまるで蛇のような動きで這い回る。
「ひぁ、い……や、んあぁっ」
嫌だと叫んだはずだったのに、ザフィルの舌が触れた場所が痺れたようになって、頭の中がその感覚を追うことしかできなくなる。
未知の感覚だけど、身体はもっとそれが欲しいと勝手に疼き出す。
「そうそう、そうやって素直に快楽だけ受け止めてたらいい」
笑ったザフィルが、蜜に塗れた蕾にそっと歯を立てた。その瞬間、ファテナの身体はがくがくと大きく震えたあと、ぐったりと弛緩した。
「もうイったか。結構あっという間だったな。まぁ、まだまだ休ませる気はないけど」
一度口元を拭ったザフィルが、再びファテナの秘部に顔を埋める。ひくひくと余韻に震える花弁を舌で割り開くようにして、あふれる蜜を吸い上げるように啜られる。
「や、あぁっ、むり、もうやめ……っ、おかしくなっちゃう……っ」
「うん、おかしくなればいい。何もかも分からなくなるくらい、溺れてしまえ」
「い……ぁ、だめ、また何かきちゃ……ぁ、ふあぁっ」
「ほらまたイった」
くすくすと笑うザフィルの声がどこか遠くで聞こえる。
白く靄のかかったような頭では、何も考えることができない。
逃げなければ、抵抗しなければと思う気持ちは確かにあるのに、その考えがまとまる前に、ザフィルの舌が、指が、ファテナから思考を奪っていく。
はくはくと陸に打ち上げられた魚のように、ファテナは寝台の上で荒い呼吸を繰り返す。
重く怠い身体は起き上がるどころか手足を動かすことすら億劫だ。時々びくんと身体を震わせながら、ファテナはぐったりとして目を伏せる。
あの鋭く激しい感覚が絶頂することだと教えられ、あれから数えきれないほどに何度も、ファテナはそれを身体に教え込まれた。
抵抗しようとしても、拘束された身体ではほとんど身動きできなくて、結局彼に与えられる快楽を受け止め続けることしかできなかった。
瞬きをすると、涙が一雫こぼれ落ちて頬を滑っていった。頬には幾筋も涙の跡が残っているし、たくさん泣いたから目が重たい。だけど、それが抵抗して流した涙なのか、快楽に追い詰められて流した涙なのか分からない。
「大分解れたかな」
つぶやいて、ザフィルが汗ばんだファテナの頬に貼りつく髪を除けると、そのまま頭を撫でた。酷いことをされているはずなのに、触れる手はとても優しくてあたたかい。
思わずそれを黙って受け入れそうになって、ファテナは慌てて首を振った。
「もう、充分でしょう。これ以上、辱めるのはやめて」
「この状況でやめろとか、何の冗談だよ」
ファテナの訴えを鼻で笑って、ザフィルは手早く残りの服も脱ぎ捨てていく。引き締まった身体はあちこちに傷跡が残っていて、彼が戦いの中に身を置いて生きてきたことを示している。
「あんまじろじろ見んなよ」
そう言いながら、ザフィルはファテナの上に覆いかぶさる。秘部に押し当てられているものの熱さと硬さに、ファテナは小さく息をのんだ。無駄だと分かっていても、ずり上がって逃れようとしてしまう。
そんなファテナの抵抗を、ザフィルは腰を掴むだけで軽々と封じた。
「お願い、もう、許して……」
弱々しい声でファテナが懇願した瞬間、部屋が小刻みに揺れた。地震かと窓の方に目をやったファテナとは反対に、ザフィルは忌々しそうに小さく舌打ちする。
「チッ……、諦めの悪いやつらだな」
彼の言葉の意味が分からず眉を顰めたファテナに視線を向けることなく、ザフィルは窓の外に向かって勝ち誇った笑みを見せる。
「もう、こいつはおまえらのものにはならない。そこでこいつが純潔を失うのを、指を咥えて見てろ」
誰に向けてのものか分からない宣言のあと、ザフィルはファテナの脚を肩に担ぐようにした。そして、勢いよく腰を押しつけた。
「く……あ、あぁっ……」
予想したような痛みはなかったものの、衝撃で息が詰まる。身体の中に感じる異物感と内臓を押し上げられるような感覚に、深く呼吸をすることが怖い。
浅く息をするファテナの耳に、部屋の外で精霊の叫び声が聞こえたような気がした。
ハッとして窓の外に視線を向けようとすると、ザフィルの手がそれを止めるように頬を押さえた。
微かに聞こえるのは、水の精霊の声だろうか。いつも穏やかだったはずのその声は、怒り狂っているような響きだ。だがそれも、どんどん遠く小さくなっていく。
遠ざかるその声に耳を傾けようとするものの、ザフィルのものに身体の内側を擦り上げられると全身が震えるような快楽に襲われて集中できない。先程何度も教え込まれた絶頂の波が、少しずつ近づいてきているのを感じる。
「すご……キツい、な」
眉を寄せて、ザフィルが吐息混じりにつぶやく。ぐるりと中で円を描くように腰を押しつけながら、ザフィルはファテナの髪を一房掬い上げた。そして嬉しそうに笑う。
「あぁ、色が、変わってきたな。本来の色は――紺か。綺麗な色だ」
「え……?」
揺さぶられて呼吸を乱しながら、ファテナはザフィルの手の方に視線を向ける。
真っ白だったはずのファテナの髪は、毛先から青みがかった黒に変化していた。ザフィルが腰を打ちつけるたびに、まるで反応するかのように色が変わっていく。
精霊の力が宿ると言われたその髪の変化に、ファテナはどうしようもない不安を感じて怯えたようにザフィルを見上げた。
「髪、が……」
「あんたの本来の髪の色は、真っ白じゃない。精霊に食われて色を失っていただけだ」
「精霊、に?」
目を瞬くファテナの髪をもう一度掬い上げて、ザフィルはうなずく。その髪は、すでに中程まで色が変わっている。
「巫女姫だなんて祭り上げられてたけど、あんたは精霊に差し出された生贄だ。精霊は無垢なものを好むから、あんたの色を食って白く染めた。そして今度は少しずつ命を食らってる」
「そんな、そんなわけ……っあ、んっ」
首を振って反論しようとするのを封じるかのように、ザフィルが強くファテナの身体を突き上げた。
「あんたも精霊が怒るのを聞いただろう。あいつらは、あんたを餌としか思ってない。あんたを食わせておけば、精霊は他の人間に悪さをしないからな。ウトリド族は、そうやって精霊を手懐けてきた」
「でも、だって、精霊は私に力を貸してくれる……っ」
「あぁ、そうだな。だけど力を使った分だけ、精霊はあんたの命を食らってる。精霊は対価なしに力を貸すことはない。俺たちや他の部族が滅多に精霊の力を借りようとしないのは、対価に何を奪われるか分からないからだ。ウトリド族は、精霊お気に入りのあんたを差し出して、その力を使わせてるに過ぎない」
「嘘よ、そんな……」
首を振るたび、敷布の上に髪が広がっていく。その髪はもう、半分以上色を変えている。
「なら聞くが、精霊に愛された一族と呼ばれるウトリド族の中で、あんた以外に精霊の力を使えたか? あんたの妹は、長である父親は?」
「それは……」
ザフィルの言葉に、ファテナは唇を震わせる。確かに両親も妹もファテナに精霊の力を使うよう命令するばかりで、自分たちで何かをすることは一度だってなかった。そのことを両親に尋ねると、酷く叱られたことまで思い出してしまう。ファテナが一番精霊の力をうまく使うことができるのだから、長の娘として貢献するのは当然だと言われていたのだ。
そんなファテナの表情を見て、ザフィルは当然だというようにうなずいた。
「いないだろう。あいつらは、あんたに精霊の力を使わせるだけで、自分たちは何もしていない。ウトリド族は精霊に愛されてる? 笑わせるなよ、精霊が気に入ってたのはあんただけだ。それも餌としてな」
吐き捨てるようなザフィルの言葉に、ファテナは首を振ることしかできない。自分が今まで信じてきたものを否定されて、心のどこかにひびが入ったような気がする。
幼い頃、精霊に選ばれたと父親に告げられて、その日から家族の中でファテナだけが別で暮らすことになった。
孤独な日々を癒してくれたのは、そばに感じる精霊の笑い声。精霊の力を使えばその時だけは父が褒めてくれ、食事を与えられた。役に立てるなら、褒めてもらえるならと必死で精霊に祈り続けた日々は、間違っていたのだろうか。
「精霊は、もうあんたを餌としては見ない。あいつらからすれば、俺によって穢された存在だからな。あのまま食われ続けていれば、あんたは数年も経たないうちに死んでいただろうな」
ゆるゆると腰を動かしながら、ザフィルがファテナの髪に触れた。満足そうに目を細め、色が全て変わったことを教えられる。
「仕上げは、胎の中で子種を受け止めることだ。それで精霊との縁は、完全に切れる」
「え、待っ……、や、あぁんっ」
言われた言葉を受け止める前に、ザフィルの腰の動きが速くなる。大事な話をしていたはずなのに、激しく突き上げられて何も考えられなくなっていく。
「だめ、ザフィル……止まっ……あぁぁぁっ」
「このタイミングで名前を呼ばれて、止まれる訳がないだろ、ファテナ」
どこか嬉しそうな声で彼がつぶやいて、更に強く腰を押しつける。身体の奥深くで熱いものが弾けたのを、ファテナは熱に浮かされたような頭のどこかで感じとっていた。
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