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とあるブログ
しおりを挟む帰宅した蓮は、パソコンへと向かった。調べる内容は、詩音の病気について。
病名を聞いた時にも少し調べたけれど、完全に文系の蓮にとって医学的に説明した文章は難しすぎてよく分からなかったし、有名な俳優も患った病気だったせいか彼に関するゴシップまがいの記事ばかり出てきて読むのをやめてしまったのだ。
もう一度調べ直して、やはり医学用語はさっぱり分からないものの、原因不明の病であることと、治療法が未だ見つかっていないことだけは理解する。
そんな中でひとつ、蓮の目を引いたページがあった。
それは、2年ほど前に更新の途絶えたブログ。詩音と同じ病を、発症してからの日々を記録したものらしい。
同窓会で知らない人ばかりだったことで病に気づいたこと、取引先の人の記憶を失ったことで仕事を辞めたこと、従兄の記憶を失った日のこと。
自分に従兄がいたことが分からない、写真を見ても全く思い出せない、年に数回会っていたはずなのに、と当惑したような文章で書かれている。
その日を境にブログの更新頻度は一気に下がり、忘れたくないのに、と辛い心のうちを吐露するものが時折投稿されるだけになる。
最後の投稿は、もう覚えているのは母親のことだけだ、世界には自分と母親しかいないようだとつぶやくような一文のみ。
パソコンを閉じて、蓮は眉間を押さえてため息をついた。詩音も、同じような経過を辿るのだろうか。
だけど蓮のことは覚えていてくれたじゃないか、と頭の中で声がして、どうしてもそれに縋りたくなる。
雛子が詩音に会う前に怖くなると言っていた意味が、少しだけ分かったような気がする。
あんなに楽しそうに笑ってくれたのに、蓮くんと呼ぶ声だってまだ覚えているのに、次に会う時に同じように笑いかけてもらえる保証はないのだから。
まるで初対面のような対応をされた時、蓮はどんな反応をすればいいのか、まだ分からない。
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