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その時、人の気配が近づいてくることに気づいて、アンバーは慌てて部屋の隅に身を縮めた。縄を解いたことがバレないように、縛られている振りをする。
「ほら、入れ」
荒々しく扉が開き、倒れ込むように1人の男が部屋の中に転がった。
狭い部屋なので、小さく身体を縮めたアンバーの爪先に男の頭が触れる。
大柄な、体格の良い男だが、その腕は後ろ手に縛られている。精悍な顔立ちをしているものの、恐らく殴られたのだろう、口元には血が滲んでいる。
怯えて身体を震わせる演技をしながら、アンバーは冷静に男を観察していた。突き飛ばされて倒れ込んだように見せて、しっかり受け身を取っていたところを見ると、戦いに慣れた男なのだろう。
だけど、そんなことよりも何より男の精気がとても美味しそうで、空腹のアンバーは、今すぐにでもかぶりつきたくなる気持ちを必死で抑えていた。
この極上の精気を食べるために、することはただひとつ。邪魔者の排除だ。
「嬢ちゃん、部屋が狭くなって悪いな。人生最後の夜を過ごすには狭いだろうけど、棺桶よりは広いだろ」
夜明け前に、コンテナに詰めて海に沈める予定だと笑いながら告げられて、アンバーは涙目で首を振る。本当は別に怖くなんかないけれど、ここはしっかりと、か弱い振りをしておかなければ。
「お、お願いです。助けてください……っ、何でもしますから……っ」
出て行こうとする男の身体に縋りつき、こっそり胸を押しつけながら震える声で訴えると、下卑た笑みを浮かべた顔が近づいてくる。地味な装いのアンバーには食指が動かなかったようだけど、どうせ殺すのならその前に…と思っているのが丸分かりだ。
着痩せするアンバーは、服の下に豊満な肉体を隠している。
――うっわ、やっぱマズそう……。
心の中で舌打ちをしつつ、アンバーは涙目で目の前のゴロツキの顔を見上げる。
「へぇ、何でもするって?」
「えぇ、何でも」
にっこりと笑ったアンバーは、内心で顔をしかめつつも目の前の男の顔を引き寄せて、唇を重ねる。死なない程度に、それでも一気に精気を奪いとると、その身体はあっさりと意識を失って床に倒れた。
やっぱり全然美味しくない精気に、アンバーは少し顔をしかめてしまう。
他に見張りはいないことは気配で確認済みなので、アンバーはため息をついて立ち上がると部屋の外に意識を失った男の身体を転がした。そして、お目当ての精悍な男のそばに行き、顔をのぞき込んだ。
「おい、あんた……」
戸惑ったような声をあげる唇にそっと指先を置いて、アンバーはにっこりと笑う。
「お兄さん、何やらかして捕まったの?いい身体してるし、弱いわけじゃないよね」
ん?と首をかしげると、男は戸惑ったように視線を逸らした。
「……あんたがココに連れ込まれるのを見たから」
少し気まずそうに告げられた言葉に、アンバーは一瞬目を見開いたあと、破顔する。
「やだ、あたしを助けるために?嬉しいなぁ。ありがとー!」
「あんた、何者だ」
警戒したような表情を浮かべる男に、アンバーはにっこりと笑ってみせた。正体を隠すことをやめたアンバーは、編んでいた髪を解き、眼鏡を外し、着ていたワンピースのボタンを外し始める。地味な服に隠されていた豊満な身体があらわになり、男は一瞬息をのんだ。
この、男の視線が釘付けになる瞬間が、アンバーはたまらなく好きだ。
「ほら、入れ」
荒々しく扉が開き、倒れ込むように1人の男が部屋の中に転がった。
狭い部屋なので、小さく身体を縮めたアンバーの爪先に男の頭が触れる。
大柄な、体格の良い男だが、その腕は後ろ手に縛られている。精悍な顔立ちをしているものの、恐らく殴られたのだろう、口元には血が滲んでいる。
怯えて身体を震わせる演技をしながら、アンバーは冷静に男を観察していた。突き飛ばされて倒れ込んだように見せて、しっかり受け身を取っていたところを見ると、戦いに慣れた男なのだろう。
だけど、そんなことよりも何より男の精気がとても美味しそうで、空腹のアンバーは、今すぐにでもかぶりつきたくなる気持ちを必死で抑えていた。
この極上の精気を食べるために、することはただひとつ。邪魔者の排除だ。
「嬢ちゃん、部屋が狭くなって悪いな。人生最後の夜を過ごすには狭いだろうけど、棺桶よりは広いだろ」
夜明け前に、コンテナに詰めて海に沈める予定だと笑いながら告げられて、アンバーは涙目で首を振る。本当は別に怖くなんかないけれど、ここはしっかりと、か弱い振りをしておかなければ。
「お、お願いです。助けてください……っ、何でもしますから……っ」
出て行こうとする男の身体に縋りつき、こっそり胸を押しつけながら震える声で訴えると、下卑た笑みを浮かべた顔が近づいてくる。地味な装いのアンバーには食指が動かなかったようだけど、どうせ殺すのならその前に…と思っているのが丸分かりだ。
着痩せするアンバーは、服の下に豊満な肉体を隠している。
――うっわ、やっぱマズそう……。
心の中で舌打ちをしつつ、アンバーは涙目で目の前のゴロツキの顔を見上げる。
「へぇ、何でもするって?」
「えぇ、何でも」
にっこりと笑ったアンバーは、内心で顔をしかめつつも目の前の男の顔を引き寄せて、唇を重ねる。死なない程度に、それでも一気に精気を奪いとると、その身体はあっさりと意識を失って床に倒れた。
やっぱり全然美味しくない精気に、アンバーは少し顔をしかめてしまう。
他に見張りはいないことは気配で確認済みなので、アンバーはため息をついて立ち上がると部屋の外に意識を失った男の身体を転がした。そして、お目当ての精悍な男のそばに行き、顔をのぞき込んだ。
「おい、あんた……」
戸惑ったような声をあげる唇にそっと指先を置いて、アンバーはにっこりと笑う。
「お兄さん、何やらかして捕まったの?いい身体してるし、弱いわけじゃないよね」
ん?と首をかしげると、男は戸惑ったように視線を逸らした。
「……あんたがココに連れ込まれるのを見たから」
少し気まずそうに告げられた言葉に、アンバーは一瞬目を見開いたあと、破顔する。
「やだ、あたしを助けるために?嬉しいなぁ。ありがとー!」
「あんた、何者だ」
警戒したような表情を浮かべる男に、アンバーはにっこりと笑ってみせた。正体を隠すことをやめたアンバーは、編んでいた髪を解き、眼鏡を外し、着ていたワンピースのボタンを外し始める。地味な服に隠されていた豊満な身体があらわになり、男は一瞬息をのんだ。
この、男の視線が釘付けになる瞬間が、アンバーはたまらなく好きだ。
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