【R18】清楚な彼女の裏の顔

夕月

文字の大きさ
2 / 7

2

しおりを挟む
 その時、人の気配が近づいてくることに気づいて、アンバーは慌てて部屋の隅に身を縮めた。縄を解いたことがバレないように、縛られている振りをする。
「ほら、入れ」
 荒々しく扉が開き、倒れ込むように1人の男が部屋の中に転がった。
 狭い部屋なので、小さく身体を縮めたアンバーの爪先に男の頭が触れる。
 大柄な、体格の良い男だが、その腕は後ろ手に縛られている。精悍な顔立ちをしているものの、恐らく殴られたのだろう、口元には血が滲んでいる。
 怯えて身体を震わせる演技をしながら、アンバーは冷静に男を観察していた。突き飛ばされて倒れ込んだように見せて、しっかり受け身を取っていたところを見ると、戦いに慣れた男なのだろう。
 だけど、そんなことよりも何より男の精気がとても美味しそうで、空腹のアンバーは、今すぐにでもかぶりつきたくなる気持ちを必死で抑えていた。
 この極上の精気を食べるために、することはただひとつ。邪魔者の排除だ。

「嬢ちゃん、部屋が狭くなって悪いな。人生最後の夜を過ごすには狭いだろうけど、棺桶よりは広いだろ」
 夜明け前に、コンテナに詰めて海に沈める予定だと笑いながら告げられて、アンバーは涙目で首を振る。本当は別に怖くなんかないけれど、ここはしっかりと、か弱い振りをしておかなければ。

「お、お願いです。助けてください……っ、何でもしますから……っ」
 出て行こうとする男の身体に縋りつき、こっそり胸を押しつけながら震える声で訴えると、下卑た笑みを浮かべた顔が近づいてくる。地味な装いのアンバーには食指が動かなかったようだけど、どうせ殺すのならその前に…と思っているのが丸分かりだ。
 着痩せするアンバーは、服の下に豊満な肉体を隠している。

――うっわ、やっぱマズそう……。

 心の中で舌打ちをしつつ、アンバーは涙目で目の前のゴロツキの顔を見上げる。
「へぇ、何でもするって?」
「えぇ、何でも」
 にっこりと笑ったアンバーは、内心で顔をしかめつつも目の前の男の顔を引き寄せて、唇を重ねる。死なない程度に、それでも一気に精気を奪いとると、その身体はあっさりと意識を失って床に倒れた。
 やっぱり全然美味しくない精気に、アンバーは少し顔をしかめてしまう。

 他に見張りはいないことは気配で確認済みなので、アンバーはため息をついて立ち上がると部屋の外に意識を失った男の身体を転がした。そして、お目当ての精悍な男のそばに行き、顔をのぞき込んだ。
「おい、あんた……」
 戸惑ったような声をあげる唇にそっと指先を置いて、アンバーはにっこりと笑う。

「お兄さん、何やらかして捕まったの?いい身体してるし、弱いわけじゃないよね」
 ん?と首をかしげると、男は戸惑ったように視線を逸らした。
「……あんたがココに連れ込まれるのを見たから」
 少し気まずそうに告げられた言葉に、アンバーは一瞬目を見開いたあと、破顔する。
「やだ、あたしを助けるために?嬉しいなぁ。ありがとー!」
「あんた、何者だ」
 警戒したような表情を浮かべる男に、アンバーはにっこりと笑ってみせた。正体を隠すことをやめたアンバーは、編んでいた髪を解き、眼鏡を外し、着ていたワンピースのボタンを外し始める。地味な服に隠されていた豊満な身体があらわになり、男は一瞬息をのんだ。
 この、男の視線が釘付けになる瞬間が、アンバーはたまらなく好きだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...