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4 熱い身体 ★
しおりを挟むネイトがクラリスを連れて行ったのは、彼の自室だった。近衛騎士である彼は、城内に部屋を与えられている。
そっとベッドの上に降ろされて、クラリスは小さく息をのんだ。身体の熱はどんどん酷くなっていくようだし、ネイトが欲しい、もっと触れたいと思う気持ちは膨れ上がるばかり。だけど、頭のどこかでは、この状況に戸惑う気持ちも残っていて。
「ネイト、さま」
思わず名前を呼ぶと、ネイトは安心させるように頭を撫でてくれて、そのぬくもりに少しだけホッとする。
「ネイトと呼んで、クラリス。酷いことはしないと誓うけれど、嫌だったらすぐに教えて」
耳元で、ネイトが囁く。呼び方が変わっただけで、ぐっと距離が縮まったような気がして、クラリスは思わず微笑んだ。
「嫌なことなんて、何もないです。……ネイト」
見上げて囁くと、ネイトが嬉しそうに笑った。今まで見たことのない甘く優しい表情に、思わず見惚れてしまう。優しく頬を撫でられ、ゆっくりと顔が近づいてきたから、クラリスは黙って目を閉じた。
そっと降りてきた唇は、何度も確かめるように優しく押しつけられる。クラリスにとっては、初めてのその感覚。だけど、もうそれだけでは足りなくて。
ねだるように、彼のシャツを握りしめた手に力を込めると、ネイトの瞳がゆっくりとクラリスを見つめた。
「クラリス……?」
「もっと……、して」
こんな優しい触れ合いでは足りないのだという思いを込めて見上げると、ネイトの黒い瞳の色が変わったような気がした。まるで、捕食者のようなその強い眼差しに、クラリスの背筋がぞくりとする。彼になら、食われても構わないとすら、思う。
「そんなに煽られると困る」
そう言って笑ったあと、ネイトはクラリスに深く口づけた。戸惑うクラリスの唇を強引に開き、分厚い舌が割り込んでくる。先程までの優しい口づけは何だったのかと思うほどの激しさに、クラリスは、必死でネイトの服に縋りついた。
息継ぎのたびに、クラリスの唇からは悩ましげな声が漏れる。そのことに対する羞恥心も、ネイトともっと触れ合いたいという気持ちに押されて、気づけばどこかに消えていた。口づけを交わすたび、どんどん身体の奥に熱いものが溜まっていく。だけど、今にも爆発しそうなその熱を、どうやって発散すればいいのか、分からない。
「……や、もっと……」
唇が離れていくのが嫌で、クラリスはネイトの頬に手を伸ばす。その手を握って、ネイトは妖艶な笑みを浮かべた。
「キスだけで満足できる?」
服の上から、腰のあたりをそっと撫でられて、クラリスは悲鳴をあげて身体をよじった。触れられた場所が、もっとと疼いたような気がする。
その反応を見て、ネイトは笑うと、ゆっくりとクラリスの服に手を伸ばした。
「……いい?クラリス」
指先を胸元のリボンにかけたまま、確認するようにネイトが囁く。クラリスは、両手で顔を覆いながらも、こくりとうなずいた。
しゅるりと解けたリボンと、少しずつ緩んでいく服。
媚薬のせいで熱を持っている肌が、ひんやりとした外気に触れて気持ちがいい。
優しい手つきで、それでもあっという間にクラリスの服を脱がせたネイトは、そっとクラリスを抱き寄せた。
抱きしめられたぬくもりに安心する気持ちと、明るい部屋で肌を晒す羞恥心と、もっと欲しいと願う気持ちが混じり合う。
「ひぁ……っ、んん」
ネイトの手が、下から掬い上げるようにして胸に触れた。固く尖ったその先を指先が掠めて、それだけで全身が震えるような快楽が襲う。
「真っ赤になって、とても美味しそうだ、クラリス。舐めてもいい?」
「そんなの、聞かないで……っ」
羞恥に顔を覆って緩く首を振ると、ネイトがくすりと笑った気配がした。
「だって、クラリスの嫌なことはしたくないから。ほら、こうして舐めるのと、こうやって指先で摘まれるのと、クラリスはどちらが好きかな」
問いかけながら、言葉通りに実践されて、そのたびクラリスの口からは甘い悲鳴があがる。
「そんな、分からない……っ、もう、ネイトの好きに、してっ」
与えられた快楽に翻弄されながら、必死で叫ぶと、ネイトはため息をついて笑った。
「無意識に煽るな、クラリスは。たまらない」
「え、何、……やぁっ」
片方の胸の先に強く吸いつかれて、クラリスの背が反る。もう片方は指先で引っかくように弄られて、同時に与えられた快楽を逃すように、クラリスは必死で首を振った。はずみでまとめていた髪が解け、波打つ金の髪がシーツに広がっていく。
その髪を一房掬い上げて、ネイトはそっと口づけた。
「可愛い、クラリス。ずっと好きだったんだ。この熱が冷めたあとでもう一度言うけれど、どうか俺のものになって」
甘い表情で告げられた言葉は嬉しいのに、クラリスの身体は、欲しいのはそんな言葉じゃないと叫んでいる。
経験はないけれど、身体の奥に彼の熱を受け入れないと、この疼きは止まらないことは分かる。
「ネイト、私も好き……だから、もうっ」
頭の中がぐちゃぐちゃで、紡ごうとした言葉さえ、ほとんどが熱い吐息になって消えてしまう。
言葉の代わりに、クラリスの若葉色の瞳から、涙がぽろりとこぼれ落ちた。
「お願い、助けて」
涙で滲んだ視界のむこうに、小さく息をのんだネイトが見える。
クラリスは、ネイトの首に手を回すと、強く引き寄せて噛みつくようなキスをした。
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