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綺麗に磨かれた爪を噛んでドルシーは震えた。
歯の根が合わなくなっているようなガチガチとした音が、静かな部屋ではよく響いた。
不意に、というか。
ようやくというべきか。
ドルシーは自分の立っている場所が薄氷よりも空恐ろしい場所だと気付いたようだった。
でも、それは彼女が自分で選び取って歩んだ道だったので……
そっとボートを滑らせてはみたけれど。
彼女がそのボートを救いの手立てとみるのかはまた、別だった。
「身売りなんて絶対に嫌……っ!!」
ドルシーはやはり、働き口の斡旋と伝えた私の申し出には恐怖しか覚えないようだった。
そして、声にならない叫びを上げて走って出て行ってしまった。
……彼女の想像の上ではある種の働き口しか浮かばないようでしたけれど。
読み書き、そして数字の事を考慮に入れるならば店舗の帳簿整理であるとかの道も考えられなくはなかった。
……とはいえ、やはり盗人を金銭や品物に関わらせる所には入れられるわけはないので。
となるとやはり、行きつく先は重労働しかない、という結論に至りそうだ。
そこに性が絡むのかは、彼女次第であったのだけれど。
請求書を丸めて放り出し、この部屋を出て行ってしまった彼女。
その彼女の行き着く先は、既にもう、決まっているも同然だった。
歯の根が合わなくなっているようなガチガチとした音が、静かな部屋ではよく響いた。
不意に、というか。
ようやくというべきか。
ドルシーは自分の立っている場所が薄氷よりも空恐ろしい場所だと気付いたようだった。
でも、それは彼女が自分で選び取って歩んだ道だったので……
そっとボートを滑らせてはみたけれど。
彼女がそのボートを救いの手立てとみるのかはまた、別だった。
「身売りなんて絶対に嫌……っ!!」
ドルシーはやはり、働き口の斡旋と伝えた私の申し出には恐怖しか覚えないようだった。
そして、声にならない叫びを上げて走って出て行ってしまった。
……彼女の想像の上ではある種の働き口しか浮かばないようでしたけれど。
読み書き、そして数字の事を考慮に入れるならば店舗の帳簿整理であるとかの道も考えられなくはなかった。
……とはいえ、やはり盗人を金銭や品物に関わらせる所には入れられるわけはないので。
となるとやはり、行きつく先は重労働しかない、という結論に至りそうだ。
そこに性が絡むのかは、彼女次第であったのだけれど。
請求書を丸めて放り出し、この部屋を出て行ってしまった彼女。
その彼女の行き着く先は、既にもう、決まっているも同然だった。
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