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「そ、それは……」

リュートは言葉に詰まってるようです。
一体、今まではドルシーに何て説明してたんでしょうね?
この辺は推理も何もなくっても、彼女の態度が証明してるようなものですけど。

彼は、なんて言って誤魔化していたのかしら。
今からもその誤魔化しが始まるのなら、もう少し見ていてもよかったけど……
……もう十分、実績は溜まっているものね。
それに、そんなことになったら長引くのが目に見えているので、私も後を追い、リュートの視界へ入るようにしました。

廊下に出た私と視線が合ったリュート。
彼はドルシーを胸に縋りつかせたまま、気まずそうに視線を逸らしました。

「……言えなかったんですね」

私は、誰に伝えるでもなく小声でそう呟く。
今までの行動からすると、当然推測出来る事だった。
でも、もう明かすしかない事は……本人が一番よく、分かっているはず。
だからこそ、今このタイミングで……一度外出をしたんだろうから。

「うぅっ……ぐす…………」

何も言わないリュートに、ドルシーは焦れてほとんど泣き始めてた。
……その涙が本当かどうかは、ともかくとして。
ドルシーも、リュートにさえ伝わればいいと考えているのが伝わります。
肩を震わせ、声を小さくして訴えていました。

「リュート……どうして……いくら優しいからって……」

優しい人、優しい人……と、ドルシーはよくリュートに言っていました。

自分こそが次期侯爵だと、好きな女性をそう欺く。
確かにそれは、夢を見せるという意味で、優しい嘘……と言えなくもなかったのかもしれませんが。
現実を見ていない、という意味でも、彼には優しかったのかもしれないわね。

「ねえ、リュート……何とか言ってちょうだい……!
あの子が嘘をついてるんでしょ、そうなんでしょ……?」

その言葉に、リュートは……痛々しそうに顔を歪めました。
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