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「ねーってば!お義兄さま……」

ルイスはほとんど腕へしがみつくようにして、ウィリアムをドアから引きはがそうと引っ張っている。
……けれど、体格の違いや扉の中へ進もうとするウィリアムの強硬な態度によって、彼をその場から動かすことは出来ないでいた。
挙句……

──ドンッ

「ぎゃっ……!?」

ウィリアムは、腕へと絡みつくルイスの身を振りほどいたかと思うと、耐えかねたようにその体を突き飛ばした。
尻もちをついたルイスはわが身に起きたことが信じられず、信じられないようなものを見る目でウィリアムを見上げる。
けれども、見上げた義兄の表情はとてつもなく暗く冷たいものだった。

「っ……!?」

「酒臭いんだよ……」

驚いて言葉を失うルイスめがけて、ウィリアムは吐き捨てるように呟くと再びドアへと向かいだす。
そして鍵束の中から、また一つを取り上げて鍵穴へと差し込む。

「ちょ、ちょっと……何すんの……!?」

ふらつきながらルイスは立ち上がる。
特別アルコールに弱いわけではなかったが、走るようにして移動した末に、一度ならず二度も突き飛ばされて頭を揺らされ、味わったことのないような不快感が体の中を渦巻いている。

「ねぇっ……聞いてるわけ……!?」

怒気を含み、けれどもしゃんとは立てずに壁に片手をついて支えながら起き上がるルイス。
それをちらりとも見ずに、ウィリアムは残りの鍵を試していく。
そして……

かちり、とその手元は正常に回り、鍵の開く音がした。
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