婚約者の義妹に結婚を大反対されています

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「う、ウィリアム……お義兄にいさま？」

ここにいるはずのないその人を見て、ルイスの考えは一度停止をした。
ウィリアムの表情は薄暗くて真顔に近しく、何を考えているのかさっぱりと読めない。
いつもであれば、ルイスの顔を見るだけでだらしなく笑いながら話しかけて来たというのに。

（……それに……）

ついさっきの会話を思い出す。ウィリアムは、何事かを憲兵と話していたのだ。
……ルイスの聞き間違いでなければ、憲兵たちを労わっていたのではないか？
つまりそれは、ウィリアムがこの騒動に関わっているということになる。

本来であれば、ウィリアムは本邸にいて、帰還した侯爵と話を進めているはずだった。
もしや、もう何もかもが片付いてほとぼりが冷め……それで、ルイスを迎えに来たのだろうか？

……けれど、この暗い表情を見る限り……何も明るい話は望めないように、ルイスには感じられた。

「……あ、あれぇ？ウィリアムおにーさま、どーかしたです？」

とびっきり幼く聞こえるように語尾を甘く伸ばしながら、ルイスはウィリアムへと声をかける。

……アルコールの気配を漂わせながら話しかけてきた義妹に、ウィリアムが何を感じたのかは分からない。
ただ、冷たく彼女を一瞥すると……すたすたと屋敷の中に入っていった。

「えっ……あ、あのぅ……お、お義兄さま……っ！」

ルイスは当然その後を追う。
だが、慌てているのはウィリアムが彼女を無視したから、という理由だけではなかった。