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この別荘地は静養するにはいい場所かもしれないが、歓楽街も大きな市場も遠いところにあって……
小高い丘からは牧歌的で小さな街が見下ろせるのみ。
ルイスのように豪勢に遊びたい人間には、滞在するのに不向きというしかないところだったからだ。
馬車の方を見てみても御者以外に人影はなく、使用人へと聞けば客人たちは早々にエントランスへと通してしまっているのだという。
門の内側に入れてしまっていたり、そもそもルイスへ会わせてもいいのかと使用人が尋ねに来ている辺りは、そんなに警戒されるような風体ではない……ということだろう。
見た目が怪しい人間であれば、文字通り門前払いになってしまうだろうから。
……もちろん、普段は使用していないこの別邸の使用人の危機感が少し欠けているのかもしれないけれど。
「ていうか、どんな人たちですぅ?」
ここに来て数日ではあるのだが……変わり映えのない景色を眺め続けて、いい加減退屈をしていたルイスがそう尋ねる。すると年若い使用人たちは、はしゃいだように笑みを見せた。
「とっても麗しい方々ですわ!道中を旅しながら商人をされているのだとか」
「ええ、皆さん揃ってお顔立ちも華やかでお話もお上手で……」
……本邸とは違ってこちらの使用人には砕けたものも多い。
見た目が華やかだと聞いて、ルイスは興味が出てきたが……同時に商人と聞いたことで、苦い思い出も頭に浮かぶ。
(まさかあの詐欺集団がまた近づいて来たんじゃないでしょうね……)
小高い丘からは牧歌的で小さな街が見下ろせるのみ。
ルイスのように豪勢に遊びたい人間には、滞在するのに不向きというしかないところだったからだ。
馬車の方を見てみても御者以外に人影はなく、使用人へと聞けば客人たちは早々にエントランスへと通してしまっているのだという。
門の内側に入れてしまっていたり、そもそもルイスへ会わせてもいいのかと使用人が尋ねに来ている辺りは、そんなに警戒されるような風体ではない……ということだろう。
見た目が怪しい人間であれば、文字通り門前払いになってしまうだろうから。
……もちろん、普段は使用していないこの別邸の使用人の危機感が少し欠けているのかもしれないけれど。
「ていうか、どんな人たちですぅ?」
ここに来て数日ではあるのだが……変わり映えのない景色を眺め続けて、いい加減退屈をしていたルイスがそう尋ねる。すると年若い使用人たちは、はしゃいだように笑みを見せた。
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「ええ、皆さん揃ってお顔立ちも華やかでお話もお上手で……」
……本邸とは違ってこちらの使用人には砕けたものも多い。
見た目が華やかだと聞いて、ルイスは興味が出てきたが……同時に商人と聞いたことで、苦い思い出も頭に浮かぶ。
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