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わかってみれば何のことはない。

トラブルが起きたことを露呈するのを恐れて領地を手放し、ケリーティアを道具として求めるあまりに他の縁談には気乗りを見せず……
そして、細かなことでも大局の方でも質問にも答えられない。
それどころか、記録の読み方すら分からないで的外れな返事を出し……まったくの妄言ばかりを繰り返す。

この分であれば、当然ながら彼女ケリーティアがウィリアムのことをいまだに好いているというのも偽りであるとの見方をした方がいいだろう。

(……それにしては、まるで真実のように口にし、そしてそのことへ縋るように叫んでいたが……)

頭の痛いことはまだあった。

「……誰に吹き込まれた」

「……っ」

ウィリアムは、肩をぴくりと動かした。

認めたくはないが、このように知識不足の息子が一人でこのような……慰謝料として領地を手放すなどと考えついて実行したとは考えられない。
サインは間違いがなく息子のものだが、契約書自体は書式も滑らかで相当な知識がないと作成できないだろう。

そして、先ほどからの……ケリーティアがウィリアムへと想いを寄せている、などという戯言。
情報源がどこなのかは知らないが、これらを……この契約書を作るように促した存在と同一人物……または、近しいものと見て間違いがなさそうだった。

「この期に及んで隠そうなどと考えるなよ、ウィリアム」

……父をこれ以上、失望させてくれるなと。
胸中で呟いた言葉が、彼の心に届いたのか……

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