婚約者の義妹に結婚を大反対されています

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「待て、ウィリアム……お前、さっきから言ってることの辻褄が……」

侯爵はとうとう、額を抱えるようにして首を振った。
息子の言動のあまりにも一貫性のなさに、混乱を来きたしているのだった。
…………多忙なことは仕方なかったが、自分が屋敷を離れた期間が長すぎたのだろうか、と自問に入る。
しかし父の困惑を前にしても、ウィリアムの頑なな態度は覆らない。

「何も間違ってることは言っておりません。彼女は俺に惚れているはずなんです」

………ウィリアムがそう断ずる根拠は、ルイスがそう言っていたからだという、その一点のみなのだが。
当然、侯爵にはそのような事情が読めるはずもない。

「……言ってることを整理してみろ。婚約破棄を申し出たのは向こうなのだろう？それが惚れているのも向こうからで、慰謝料を払うのはこちらだとお前は言う……」

……口に出しながらも、その荒唐無稽さにうんざりとしている侯爵。

既に伯爵家からの情もないのだとしたら、ウィリアムが一人で暴走しているということになる。
だとすれば、この執着は危険なものではないか？と、侯爵は感じた。

もし一人で舞い上がってありもしない相手の感情を根拠として信じ込んでいるとしたら……？
醜聞が重なるだけだ、としか考えられない。

……侯爵は、先ほど握りつぶしかけた書類を机の上へ置いてため息をついた。

「この証文については私が話を付けてくる。お前は……お前にはまた、別の縁談も用意してやろう。もう件の令嬢は諦めろ……」