婚約者の義妹に結婚を大反対されています

泉花ゆき

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ウィリアムの背中を、何か冷たいものが滑り落ちた。
何かを間違えてしまったのかもしれない、とは一瞬思っても……それが何かは思い当たらない。

「…………ウィリアムよ」

「は、はい……」

たっぷりの間を持ってから呼ばれる名に、思わずウィリアムは姿勢を直す。
書類を手にした侯爵は指先が震えており、もしこれが正式な契約書でなければ……今すぐにでも握りつぶしたいとでもいうような気持ちが息子まで伝わってきている。
直立して父の言葉を待っていれば、地を這うような低い声で続きの発言が耳に届いた。

「……お前は、何をやったかわかっているのか……?」

「はっ……?」

良かれと思って差し出したに対して、一瞬で沸騰したような怒りを返され……
つかの間、ウィリアムは動きを止めた。

(……なぜだ……!?父上は何に怒っているんだ……!)

……侯爵が怒っていることは明らかであり、そのこと自体はウィリアムにも伝わるのだが……
しかし、なぜ怒っているのか。その理由が、彼には一向にわからない。
弁解をしなければならない。その一心で、ウィリアムは説明を繰り返す。

「い、いえ……ですから……その、トラブルの続いている土地をいっそ一度手放し……」

「お前がもたらした不祥事の尻拭いを他人に任せるつもりか!?」

「ひっ……!」

おそるおそる抗弁を試みた息子へ、待っていたのは父の怒声だった。拳を机に打ち付ける、ドンという音と共に雷を落とされて、ウィリアムはすくみ上がる。
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