婚約者の義妹に結婚を大反対されています

泉花ゆき

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「っ……この程は、無事のお帰りを……」

まっすぐ前を向くことも出来ずに、視線を斜め下へと逸らしながら口を開く。
出迎えの口上を発したウィリアムの呼吸を、ゴトンという重たい音が遮った。侯爵が、吸っていた煙管をテーブルへ置いた音だった。
思わず肩を震わせてから顔を上げると、視線がかち合うのが分かる。くゆる紫煙の向こう側から、鋭い眼光が実の息子を射竦めていた。

「……無駄口を叩いている暇も惜しい。何故呼ばれたのか、分かっているな?」

「……はい……」

文字通り、睨まれていることで委縮する心を抑えながら、書類を抱えている手に力を込める。

「……学ばせて頂いている領地の件、そして……妙な連中と関わりがあるなどという不名誉な噂をたてられてしまい……」

御託を許されず、ストレートに切り込んできた父に倣って貴族らしい迂遠さを捨てウィリアムは告げた。
侯爵はそれを聞いてため息をつき、ウィリアムへ先を促すように言う。

「はぁ……一体どうしたと言うんだ、お前らしくもない」

「面目次第もございません……」

父の期待を裏切ってしまったという事実が重く響いて、ウィリアムは声量を落とす。
けれど、挽回する手立てがないわけではないという思いが彼の声を再び強くさせた。

「……ですが、せめてと思い、解決策を持って参りました……!」

「ほう……?」

見せてみろ、というように、じろりとした眼差しがウィリアムを射抜く。
ウィリアムは頷くと、用意していた書類を……机の上へと差し出した。
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