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「か、かしこまりました……っ!」

ウィリアムは眉間に皺を寄せ、御者の怯えるような声を聞いてからカーテンを閉じる。
暗いながらも見えた外の景色では、既に侯爵家の近くまで来ているようだった。

馬が脚を取られる程に急がせている甲斐もあって、普段よりは到着の体感が早いような気もした。
………侯爵家に着いたとなれば、どれだけの事が今動いていて、どんな処分の下される恐れがあるのか……

とにかく、情報を集めなければならない。今更平民の訴えなどみたくもないが、届いたという領地からの手紙にも目を通さなくては……

「はあ……」

深くため息をついて額を抑えたウィリアムはそこで、目の前に座るルイスがやけに大人しくなったことに気付く。
馬車が揺れたことでうやむやになっていたが、先ほど彼女は何か自分に噛みつこうとしていたのではなかったか……?

義妹の本性がまさかそんな粗暴な女だとは思いたくなかったが、勝手に口を挟むばかりか領地にて怪しい契約を済ませて来て詐欺師に騙され、それを他人のせいだと激昂する……
こんな身勝手なふるまいを見ていれば、そしてその尻拭いをウィリアムがしなければならないようなこの現状。それを思えば、彼女が混乱の元であることは間違いではないのかもしれない……

ウィリアムは、そんな思いにかられながらルイスの方をちらっと見る。
ルイスは席に腰掛けながら、ドレスの膝へ乗せた手を拳にして握り込み、不思議なほど静かになって俯いていた……
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