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フレンツのその仕草に、ルイスは顔を覆っていた手を外してパッと笑顔になった。

(やっぱりフレンツ様、こっちのことを庇ってくれる!そりゃそうだよ、こんな訳分かんない奴らよりも婚約者自分のほうが大事に決まってる……)

それにこの、一瞬で室内の空気を統率して場を支配してしまうような力。それは公爵令息という立場にふさわしい姿で、ルイスはますますこの男の隣に立ちたいのだと……この権力が欲しいのだと再確認した。
……けれどルイスの笑顔は、続くフレンツの言葉によって多少ぎこちないものとなった。

「……それで、どうしたというんだ?」

「え……?どうしたって、ルイスはいじめられてぇ……それで……」

思ってもみなかった追撃に、ルイスは言葉を詰まらせる。笑顔になったはずの頬に汗が一筋伝った。

「……言い方を変えよう。どういったことをされて、君は何をしてしまったんだ?」

「えぇ……っ?」

……つまりフレンツは、最初から事情を話せと言っているのだろうか。
彼の顔がいつになく厳しいせいで、ルイスはたじろいでしまったけれど……起こったことを把握したいというのは、ごくごく自然な流れな気もする。
だからルイスは、もう一度涙目を作り上げて暗い顔をした。下を向くようにして、この日のためにあつらえた豪奢なドレスの布地を握る。

「……えっと…えっと……ルイスは、この会場に来て……ウィリアム義兄様もどこかに行っちゃって……一人でフレンツ様をお待ちしていたです……」
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