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「ウィリアムお義兄様の婚約破棄が決まったです!?」
……侯爵家にてその身をソファへと寛がせながら報告を聞いたルイスは、手を叩いて喜んだ。
「あーよかったぁ、あの女ずーーっとよく分かんないことばっか言っててつまんないし邪魔だったですー」
くすくすと音を立てて笑う様は可憐そのものではあるが、口調と態度はどこか粗野さも滲み出るものだった。
ルイス付きの若い使用人は、そんな彼女の髪へ櫛を通しながら報告を続ける。
「は、はい……けれど、申し出たのはケリーティア様の方からであると専らの噂で……」
おずおずと伝えはしたものの、ルイスにとってもはやどちら側からなどとは些細な問題であるようだった。丹念に磨かれた爪や指先を眺めながら眼差しもどこか覚めたものを見せる。
「ふーん?生意気な上に恥知らずってゆうか……でもお義兄様が別れられるならどっちでもいいことです、この際」
ルイスの機嫌がそこまで変わらなかったことに対して内心で安堵を覚えながら、使用人は本題へと入った。櫛をサイドテーブルへと戻しながら切り出していく。
「つきましては、先日ルイスお嬢様が計画された件の領地のことなのですが……」
「……え?」
しかし、返ってきた答えは何の気も入ってないものだった。使用人は慌てようとする心臓の鼓動を抑えながら、慎重に言葉を重ねる。
「で、ですから、ルイスお嬢様が是非にと仰っていた支援の……ウィリアム様とケリーティア様が婚約破棄をされることで、またウィリアム様へ全権が移ることでしょうし」
……侯爵家にてその身をソファへと寛がせながら報告を聞いたルイスは、手を叩いて喜んだ。
「あーよかったぁ、あの女ずーーっとよく分かんないことばっか言っててつまんないし邪魔だったですー」
くすくすと音を立てて笑う様は可憐そのものではあるが、口調と態度はどこか粗野さも滲み出るものだった。
ルイス付きの若い使用人は、そんな彼女の髪へ櫛を通しながら報告を続ける。
「は、はい……けれど、申し出たのはケリーティア様の方からであると専らの噂で……」
おずおずと伝えはしたものの、ルイスにとってもはやどちら側からなどとは些細な問題であるようだった。丹念に磨かれた爪や指先を眺めながら眼差しもどこか覚めたものを見せる。
「ふーん?生意気な上に恥知らずってゆうか……でもお義兄様が別れられるならどっちでもいいことです、この際」
ルイスの機嫌がそこまで変わらなかったことに対して内心で安堵を覚えながら、使用人は本題へと入った。櫛をサイドテーブルへと戻しながら切り出していく。
「つきましては、先日ルイスお嬢様が計画された件の領地のことなのですが……」
「……え?」
しかし、返ってきた答えは何の気も入ってないものだった。使用人は慌てようとする心臓の鼓動を抑えながら、慎重に言葉を重ねる。
「で、ですから、ルイスお嬢様が是非にと仰っていた支援の……ウィリアム様とケリーティア様が婚約破棄をされることで、またウィリアム様へ全権が移ることでしょうし」
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