婚約者の義妹に結婚を大反対されています

102

「大体、領地領地領地……領地が何だっていうんだ。あのような土地……何の価値もないから俺が任されたんだろ」

……まとめた書類を抱えながら、わたしは思わず瞬きをして止まってしまい……ウィリアム様を……侯爵令息を見上げます。
今のは本当に、貴族として立つ人の言葉なの。

「そのようなことはありません。それに今は土地の価値ではなく、そこに済む領民の方たちの生活がかかって……」

握りしめた手の中で、紙のひしゃげてしまうのを感じながら立ち上がります。
けれど……ウィリアム様は本当に、何も分かっていらっしゃらないようなことを……

「せっかくルイスがやる気を出したんだから、少しぐらい民の犠牲があったってどうってことないさ」

続く言葉を耳にして、場に静寂が訪れます。
わたしが、あまりのことに絶句をしてしまったから。

…………ようやく絞り出した言葉は少し、震えていたかもしれません。

「……ルイス様のためならば、人々が犠牲になっても構わないと、今……そう仰ったのですか」

「俺たちは貴族だぞ？あんな連中とは価値が違うんだよ」

ウィリアム様は、やはり鼻で笑うようにフンと息を吐いて……
これ以上何を言うこともないというようにこの場を立とうとしていました。

…………ああ、お芝居に行こうとしていらっしゃいましたね。大事な大事な、義妹の方と……

「何かまずいと言うならお前がサポートしてやればいい。ああ、だがルイスの邪魔はするなよ」

「…………呆れた」