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しおりを挟む「先方は、ウィリアム様にも急ぎ連絡を差し上げたと仰っていましたが……!?」
そう、わたしの元へ急用だと手紙を頂いた日に……病み上がりの身を押して訪れた先にて、有力者の方は確かにそう言っていた。
一向に沙汰がないから、無礼かもしれないが一足飛びに婚約者のわたしの元へ連絡をしたのだと。
「そうだったか?それなら行き違いがあったのかもしれないな」
……ウィリアム様は、既にこの件に関して何もかもの興味を失っているかのように、頬杖を……つきながら、視線を出入り口の方へ向けています……
いくら何でも、こんな態度をする方だったなんて……
「なあ、もう良いだろう。この後、ルイスと芝居を見に行く約束をしてるんだよ」
「は…い……?」
やっとこちらを見たかと思ったのに、その目にはこちらは映っていないかのようで……
あまりのことに二の句が告げないでいるわたしの方へ、ウィリアム様はどこか自慢げに鼻をならしました。
「凄いんだぞ、新しく出来た劇場で客席もかなり広いが、そこはうちも侯爵家だからな。特等席を用意させている。……今日は役者にも会ってやろうと思っているんだ。ルイスが花形に会いたいと言って……」
そうやって楽しそうに語るウィリアム様を前にして………わたしの頭の中で、何かの切れるような音を聞いたような気が致しました。
バン、と思わず卓上を叩きつけるようにして立ち上がってしまい……
「……その、ルイスさんが。彼の領地の支援を脅かしていると、先方から連絡を受けたのです!」
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