婚約者の義妹に結婚を大反対されています

泉花ゆき

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「ルイスさん……」

どこに居たのか物陰から飛び出してきた侯爵令嬢は、わざとらしく自分の口に手をあてて驚いたようなポーズを取りました。

「あーー、びっしょりになっちゃって水浴びですぅ?でも、こんなに寒いのに不思議ですね」

……彼女は邸内だと言うのに殊更に服を着込んでいて、その頬は暖かさになのか愉悦になのか薄っすらと赤くしていました。くすくすと笑いながら、床に零れた水を踏みつけます。

「あなた、一体……」

寒い部屋でさんざん待たされた後で水をかけられてしまい、流石に冷静では居られなくなって強い視線を送ってしまいますが……ルイスさんは何も気にすることのないように肩を竦めました。

「ごめんなさぁい、ちょっと準備に手間取ってしまって……フレンツ様も忙しい時に来てくれたですから、張り切っちゃってぇ」

いまさら何をすることがあるのか、なんて。
聞く気は全然起きません。何もかも全てが、嘘にしか聞こえず……

「それよりも、どうしたですか?あーー、うちの使用人がやってしまったみたいです?」

「ひっ……」

彼女がすっと視線を上階に送ると、そこから一歩も動けないでいた様子の使用人から小さな悲鳴が聞こえました。
つられてわたしも見上げますが……使用人の子はよく見るとがたがたと足を震わせて、おびえ切っているのが見て取れます。

ルイスさんはその様子も目を細くして眺めると、そのままの笑顔でわたしに向き直りました。

「ちゃぁんと怒っておきますからね、駄目だよって!」

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