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わたしが座っていた席は広い図書館の中でも貴重でやや特殊な書籍が集まる二階部のところでした。
ここは入室するのに金銭とは別の資格も必要になり……平たく言うと貴族の面々以外が入ってくることは滅多にありません。
平日の時間ということもあり、一階部では見えた人影もここにはなくて……本棚の立ち並ぶ中、一人で……考えを巡らせることにしました。
………ウィリアム様とは幼少より面識があります。両親の覚えもよく……また、侯爵家でもわたしが嫁ぐことを歓迎してくれているということは、何度も方々から聞かされていました。
彼と築いて来た時間も関係も、決して浅いものではない……と。
そう思っていたのですが。
そんな風に思っていたのは、わたしだけだったのかもしれません。
侯爵であるウィリアム様のお父上が再婚し、後妻となった元侯爵夫人が連れていた少女……ルイスさんが義妹となってから。
ウィリアム様の話は彼女のことばかりになっていって……
これが本当の妹だったら、わたしの感じた気持ちは今とは違うものになっていたのかしら……
そんなことを考えます。
けれど、もしも本当の……血の繋がった妹のことであるとしても。こんな風に、ご自身の領地の事務処理や話し合いを丸投げされてしまうなんてことが続けば。
そして、その理由が妹のことだと言うのなら。
……わたしは同じように、ウィリアム様から心を離してしまうのではないかしら……
……便箋を一枚取り出します。それに向かってペンを近付け……
ここは入室するのに金銭とは別の資格も必要になり……平たく言うと貴族の面々以外が入ってくることは滅多にありません。
平日の時間ということもあり、一階部では見えた人影もここにはなくて……本棚の立ち並ぶ中、一人で……考えを巡らせることにしました。
………ウィリアム様とは幼少より面識があります。両親の覚えもよく……また、侯爵家でもわたしが嫁ぐことを歓迎してくれているということは、何度も方々から聞かされていました。
彼と築いて来た時間も関係も、決して浅いものではない……と。
そう思っていたのですが。
そんな風に思っていたのは、わたしだけだったのかもしれません。
侯爵であるウィリアム様のお父上が再婚し、後妻となった元侯爵夫人が連れていた少女……ルイスさんが義妹となってから。
ウィリアム様の話は彼女のことばかりになっていって……
これが本当の妹だったら、わたしの感じた気持ちは今とは違うものになっていたのかしら……
そんなことを考えます。
けれど、もしも本当の……血の繋がった妹のことであるとしても。こんな風に、ご自身の領地の事務処理や話し合いを丸投げされてしまうなんてことが続けば。
そして、その理由が妹のことだと言うのなら。
……わたしは同じように、ウィリアム様から心を離してしまうのではないかしら……
……便箋を一枚取り出します。それに向かってペンを近付け……
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