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「ケリーティアさんは、何か用事があったみたいです。お見送りにはいかないって言ってました」

ルイスさんは、こちらを……木の陰にいる、わたしたちの方を振り向きながら言いました。
その姿は、ウィリアム様からはただ……ケリーティアは邸に戻っていると、そうルイスさんが伝えた通り……わたしのいる方向を眺めているのだと思っているのでしょうけれど。

中庭に植えられた木々の緑が覆い隠しているだけですぐ近くにいるだけのわたしからは、ルイスさんの表情や、含んでいる意図がはっきりと見えるような気がいたしました。

「へえ、そうなのか……?珍しいな、いつもは家の馬車が見えなくなるまで門の外にいるんだけど」

……確かに、いつもウィリアム様が我が伯爵家にいらしゃった際には、その姿が見えなくなってしまうまでお見送りをさせて頂いておりました。
ただ大切なお客様を丁重に扱っていたというだけで、特別な意識をしていたわけではなかったのですが……ウィリアム様は、見ていてくださったのですね。

「でも今日は来ないみたいですよ?早く帰りましょうです、お義兄様」

そんな積み重ねも知ってか知らずか、ルイスさんはしれっと嘘をつきながら……親しげにウィリアム様の腕を取って歩き出しました。
門の方を完全に向いてしまわれたので、会話も切れ切れにしか聞こえなくなってしまいましたが……ルイスさんの楽しげな声は届いていて......

……あの場へ飛び出して、ルイスさんから泥を掛けられたと言ってしまえばどうなるでしょう?
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