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つい先ほどまでは整然と列を為していたのに……端のほうから聞こえる小さく数が多い驚きの声は、夫人の心を苛立たせます。
「何だいお前たち、落ち着きのない……!ちゃんと静粛にして主人を迎えるんだよ!」
「で、ですが奥様!あちらから連絡もなしに早馬が……!」
「何だって?……っ!」
ざわつきだす使用人に、苛立った様子で声をかける夫人の目にもその馬は映ります。
そしてこの場に居る誰よりも、驚いたのは侯爵夫人でした。
門に待機している兵たちが槍を携えて人々の前に立ちますが、駆け出しまではしないのは……
下手に離れて護衛が弱くなってはならないことと、遠目にもその男性の身なりがそう悪いものには見えないということにありました。
「奥様、どうされましょう……!」
使用人頭に声を掛けられ、夫人は抑えた声で命を下しました。
口元には扇を寄せて、他の者には聞こえないようにしながら。
「捕えなさい、傷つけても構わないけど殺すんじゃないよ」
「はっ……!」
使用人は素早く駆け出すと、門番を始めとした護衛たちに伝達へと向かいます。
それを横目に見送って、夫人はイライラと歯を噛み締めました。
(全く……近付くなと言っておいたのに。よりによって夫の帰還する日に……!)
遠目ではありますが、幾度も顔を合わせているのです。見間違えるはずもありません。今馬車を追い越してこの侯爵家へと向かっているのは……
夫人が秘密裏に財産の割り増しを図っている、あの施設の責任者としている商人でした。
「何だいお前たち、落ち着きのない……!ちゃんと静粛にして主人を迎えるんだよ!」
「で、ですが奥様!あちらから連絡もなしに早馬が……!」
「何だって?……っ!」
ざわつきだす使用人に、苛立った様子で声をかける夫人の目にもその馬は映ります。
そしてこの場に居る誰よりも、驚いたのは侯爵夫人でした。
門に待機している兵たちが槍を携えて人々の前に立ちますが、駆け出しまではしないのは……
下手に離れて護衛が弱くなってはならないことと、遠目にもその男性の身なりがそう悪いものには見えないということにありました。
「奥様、どうされましょう……!」
使用人頭に声を掛けられ、夫人は抑えた声で命を下しました。
口元には扇を寄せて、他の者には聞こえないようにしながら。
「捕えなさい、傷つけても構わないけど殺すんじゃないよ」
「はっ……!」
使用人は素早く駆け出すと、門番を始めとした護衛たちに伝達へと向かいます。
それを横目に見送って、夫人はイライラと歯を噛み締めました。
(全く……近付くなと言っておいたのに。よりによって夫の帰還する日に……!)
遠目ではありますが、幾度も顔を合わせているのです。見間違えるはずもありません。今馬車を追い越してこの侯爵家へと向かっているのは……
夫人が秘密裏に財産の割り増しを図っている、あの施設の責任者としている商人でした。
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