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そんな折、カテリィナは侯爵が帰還するとのうわさを聞きました。
息の詰まるような使用人の監視を抜けようと、部屋へ入るふりをして入り組んだ部屋の辺りで折り返します。

そこは使用人たちが作業する部屋の近くでした。
使用人たちが手元を動かしながらも時折しゃべっている話をこっそりと聞くと……

「何だか急に忙しくないかしら?」

「あら、聞いてないの?ご当主様が帰っていらっしゃるそうよ」

「ああ、それでこんなに慌ただしいのね……」

(ふぅん……?)

カテリィナは、何事か考えながらそっとその場を離れます。
そして当初の予定通り、じめじめとした宛がわれている自室へと戻り……一人、この窮地を脱する方法について考え始めました。

当主である侯爵といえば、当然ながら侯爵夫人より立場が上のはずです。
カテリィナの所作や口調は、どちらかといえば異性に対して抜群の効果を発揮するのだと……そう、本人は自負しているものでした。

(つまり、侯爵に取り入ればいいっていうことでしょぉ……?)

それまでには医師の検診もあったはずです。使える手段は増やしておいたほうがいい、とカテリィナは考えて……
コン、コンという、ノックの音に顔を上げました。

「お食事をお持ちしました」

「……どうぞ、そこへ置いてってちょうだい」

このような扱いになってから、揃って食卓で食事を取ることは許されなくなったカテリィナですが……それでも、栄養の整っているとされる食事は三食届けられていました。

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