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願ってもない話ではありましたが、カテリィナの胸の内には不安や困惑もありました。

「あ、けれど……」  

「何だい、まだ何か心配事でも?」 

先ほど世間話をしている時に……普段はこのような遠いところの地域にまで足を運ばない、と侯爵夫人は言っていました。
カテリィナが彼女たちを知らなかったことも、ここは侯爵家の領地からは距離が離れていたからです。

つまり、夫人がカテリィナに声を掛けたことも、彼女の実家の状況を知らないのではないのかと……

「……わたくしの家では、嫁いで行った姉が何人もいて……わたくしの時に、侯爵家を満足させるような持参金が捻出出来るのかどうか……」

「ああ、何だ。そんなこと」


言い淀んだ彼女に、侯爵夫人は何のことはないと扇子を開きます。

「そんなこと気にせずに、身一つで来てくれればそれでいいんだよ」

「ほ、本当ですかぁ……?」

金糸に彩られた豪奢な小物を使う夫人へと、カテリィナは内心では飛び上がって喜びたいほどでした。

(よかったわぁ、こんな風にお金持ちのところだったら、何もかも心配しなくていいんですものぉ……!)

……それからは、呆気なく嘘のように話が進んでいきます。
カテリィナを紹介された侯爵令息のザウダは一瞬戸惑いのようなものを浮かべていたのですが……
それも夫人が何事か耳打ちをした後は、困惑しながらも何事かに納得したような顔をしていました。
何を吹き込んだのか、会の終わりには首を縦に振っていて……

「……き、君が僕の第二夫人になってくれるの?よろしく……」
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