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あの日、侯爵夫人の私室にて拾わされた書類を、一応目を通していたルナリーです。
その書類には、子爵毛で行っている事業のほとんどが書いてあるように思われましたが……

「けれど、あの書類の項目だととてもそんな風には……侯爵夫人だって、そう思っていたんじゃないかしら……?」

「そうでしょう?実はね、ルナリー。あなたが嫁いで少ししてから……うちは事業を拡大したの」

マチルダは得意げに笑いました。それは、子爵家の……引いては自分のしたことを、仲のいいいとこに褒められたいというような響きを持っていたようです。

「まあ……そうだったの?」

ルナリーは目を丸くしました。

「今までは採掘と、それで出てきた鉱物を仲買いに卸すことが主だったでしょう?けれど、ただ単純に市場へ運ぶだけでは、この先鉱脈が尽きたときに困ってしまうと思って……」

そういった話は、やはり珍しいことではなかったのでルナリーは頷きました。
元々、代々あった資産というわけではなく、持っていた土地にて偶然見つかった鉱脈ですから……例えそれらを失ったとしても、大きくマイナスのあるようには見えませんでしたが。
それでもやはり、ありうるかもしれないマイナスに備えて力を付けていくことは、正しいように思えました。

「これまでは他に依頼していた加工や、販売の方も出来ないかと思って……そちらの方に活路がないか、少し周辺を周って来ようとしていたのよ」

留学の大きな目的はマチルダの見識を広くするため、とルナリーは聞いていましたが……目的は、他にそういったところにもあったようでした。
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