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「それではわたくしも、これからは第一夫人として名乗るのですねぇ」
カテリィナとしては何ということのない話のつもりでした。
もちろん、位が上がるということに対しての喜びはあったのでしょうが……
義母である侯爵夫人からも、快い相槌が返ってくるだろうと思っての言葉です。
しかし侯爵夫人は、その言葉を聞いて少し呆気に取られたような表情を見せました。
何かに気付いたような、何かを思い出したような……そんな様子で、考え込むように自分の手元を眺めます。
「……お義母様ぁ?どうかなさいましたか」
カテリィナは、返ってくると思っていた返事がそうではなかったため、カタログから視線を義母の方へと移します。
呼びかけられて返事をした侯爵夫人ですが、どこか落ち着かない様子で宝石を陳列されていた箱へと戻して……
「え?……あぁ、そうだねぇ……うん……」
そして、そわそわしていたかと思うと、突然立ち上がって使用人へ何事かを言いつけ始めました。
「いいかい、職人との打ち合わせは別の日に延ばしてちょうだい。あたしはこれからちょっと出てくるからね……」
カテリィナは驚いて、追うように椅子から立ち上がります。
集めていた商人たちを帰すようにも指示をしながら、侯爵夫人は足早に部屋を出ていこうとしていました。
「お、お義母様。お出掛けですかぁ?」
義母はカテリィナの方に視線を向けることはなく、宝石を眺めるために嵌めていたシンプルな布手袋を脱ぎました。
そして使用人の差し出した、外出用のレース手袋を装着しなおし……
カテリィナとしては何ということのない話のつもりでした。
もちろん、位が上がるということに対しての喜びはあったのでしょうが……
義母である侯爵夫人からも、快い相槌が返ってくるだろうと思っての言葉です。
しかし侯爵夫人は、その言葉を聞いて少し呆気に取られたような表情を見せました。
何かに気付いたような、何かを思い出したような……そんな様子で、考え込むように自分の手元を眺めます。
「……お義母様ぁ?どうかなさいましたか」
カテリィナは、返ってくると思っていた返事がそうではなかったため、カタログから視線を義母の方へと移します。
呼びかけられて返事をした侯爵夫人ですが、どこか落ち着かない様子で宝石を陳列されていた箱へと戻して……
「え?……あぁ、そうだねぇ……うん……」
そして、そわそわしていたかと思うと、突然立ち上がって使用人へ何事かを言いつけ始めました。
「いいかい、職人との打ち合わせは別の日に延ばしてちょうだい。あたしはこれからちょっと出てくるからね……」
カテリィナは驚いて、追うように椅子から立ち上がります。
集めていた商人たちを帰すようにも指示をしながら、侯爵夫人は足早に部屋を出ていこうとしていました。
「お、お義母様。お出掛けですかぁ?」
義母はカテリィナの方に視線を向けることはなく、宝石を眺めるために嵌めていたシンプルな布手袋を脱ぎました。
そして使用人の差し出した、外出用のレース手袋を装着しなおし……
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