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ルナリーは侯爵家ここに嫁いで来てから反抗らしい反抗をしたことがなく……
その彼女が一転して口答えをしたように発言するものですから、義母が受けた衝撃はそれなりのものであったことが見て取れました。

アルコールの入った顔が、そのせいだけではなく赤らんでいくのが分かります。

「な、なんですってぇ!?」

椅子から立ち上がった義母が身体をぐらつかせた時は、反射的に手を差し伸べそうにもなってしまったルナリーでしたが。
横から駆けつけた使用人に支えを受けた義母が、彼女を睨んできたことで……そのような気持ちも、ふっと消えてしまいます。

(……本当は、言ってやりたいことはもっともっとあるけれど……!)

義母の、グラスを弄んでいた手が、いつの間にか握りしめる方へ変わっているのを感じました。
ゆったりと椅子に腰かけながら優雅にワインをたしなんでいたような、軽やかな仕草は見る影もなく……

格下と見定めた相手から侮辱のような言葉を受けて、怒りに打ち震えているようでした。
ルナリーとしては、今まで積もり積もったものをほんの少しだけ返しただけのことでしたが……

挙句、持参金の話を持ち出してくる始末。

(それらを私が持って帰るのは当然の権利なのに……)

けれど、義母のこの態度を見ると、おそらくルナリーが持参した金銭やそれに値するもの、そして月々の実家からの支援は……
おそらくは使い込まれてしまっているのだと、そう感じました。

(……いいえ、それでも……子爵家に戻りさえすれば、手立てはある)


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