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ずいぶんな大金を出して買いそろえた家具のうちのひとつである椅子は、実際は何一つ変わるわけでもなく上等な値段通りの座り心地で義母の身を支えています。
それへ腰掛けながら、義母はうんざりしたように視線を逸らしました。
ルナリーが、あまりにも自分に間違いなどない……そんな態度をしてまっすぐ見据えてくるものだから、居心地の悪さを味わっていました。
「分かったならいいんだよ、あんたはさっさと潰れ掛けの子爵家にでも帰っておしまい。まあ……子も産めなかった出戻り娘が世間になんと言われるかは、知ったことじゃないけれど……」
追い払うように手をしっしっと動かします。
(言い渡して表情を崩すこの子を酒の肴にでもしたかったが……興が削がれたわ)
「……お言葉ですけれど」
「は?」
「お義母様……いいえ、侯爵夫人は、あまり一般常識を知らずに侯爵家へと嫁がれたのでしょうか」
「……なんですって?」
今、この義理の娘は自分に何と言ったのだろうか。
その重厚な肘掛けに腕を乗せながら、酔いに鈍くなった頭を振る義母。
ルナリーは、既に縁は切れたとばかりに呼び名にも一定の線を引いて進言します。
それは聞きようによっては敬意をはらんだセリフでもあったのですが……
二人の間に流れる空気が、ただただ余所余所しさを演出したのだということを物語っていました。
義母の頭にゆっくりと血が上っていきます。
「私とザウダ様は、婚姻して今までの期間が一年と少し……それに、同席する機会すらほとんどなく……」
それへ腰掛けながら、義母はうんざりしたように視線を逸らしました。
ルナリーが、あまりにも自分に間違いなどない……そんな態度をしてまっすぐ見据えてくるものだから、居心地の悪さを味わっていました。
「分かったならいいんだよ、あんたはさっさと潰れ掛けの子爵家にでも帰っておしまい。まあ……子も産めなかった出戻り娘が世間になんと言われるかは、知ったことじゃないけれど……」
追い払うように手をしっしっと動かします。
(言い渡して表情を崩すこの子を酒の肴にでもしたかったが……興が削がれたわ)
「……お言葉ですけれど」
「は?」
「お義母様……いいえ、侯爵夫人は、あまり一般常識を知らずに侯爵家へと嫁がれたのでしょうか」
「……なんですって?」
今、この義理の娘は自分に何と言ったのだろうか。
その重厚な肘掛けに腕を乗せながら、酔いに鈍くなった頭を振る義母。
ルナリーは、既に縁は切れたとばかりに呼び名にも一定の線を引いて進言します。
それは聞きようによっては敬意をはらんだセリフでもあったのですが……
二人の間に流れる空気が、ただただ余所余所しさを演出したのだということを物語っていました。
義母の頭にゆっくりと血が上っていきます。
「私とザウダ様は、婚姻して今までの期間が一年と少し……それに、同席する機会すらほとんどなく……」
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