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示されたルナリーが膝を折って書類を一枚拾い、目を通し始めるのを満足そうに眺めながら義母は続けます。
「ご実家の事業、ずいぶんと傾いていらっしゃるわよねぇ?」
ワインでぬれた唇を嫌味な笑みの形に歪め、脚を組み替えながらそう蔑みの言葉を掛ける義母。
アルコールで滑らかになった口は、いつも以上にとどまるところを知らないでいました。
芝居がかったような口調で、大げさに手を広げ肩をすくめます。
「まぁ~、なんてことかしらね!あんたみたいな何処の馬の骨ともしれない女と由緒正しい侯爵家の長男であるザウダちゃんが結婚できたのは、一体どうしてだったと思う!?」
「…………」
ルナリーは反応を示しません。先ほどまではしゃがんで書類を拾いましたが、姿勢を戻して今は伏し目がちに立っているだけでした。
「あんたの生家であるちんけな下級貴族の家が、ちんけなりにまぐれで成金として名を上げ始めたからよ」
「……っ」
ルナリーの目元が、ぴくりと動いたような気がしました。それとも、それはアルコールで揺らいで見える義母の目の錯覚でしょうか?
彼女を呼びつける前にもグラスを何杯か開けていた義母は、それはそれは大きなため息をついて……
「それが何だい、商売に失敗して傾いたって!?あんたのところから金を取ったら、いったい何が残るのかねえ!」
「………」
ルナリーは、やはり何も口にしません。ただ、書類を握りしめる手元に、少しだけ力が入ったように見えました。
「ご実家の事業、ずいぶんと傾いていらっしゃるわよねぇ?」
ワインでぬれた唇を嫌味な笑みの形に歪め、脚を組み替えながらそう蔑みの言葉を掛ける義母。
アルコールで滑らかになった口は、いつも以上にとどまるところを知らないでいました。
芝居がかったような口調で、大げさに手を広げ肩をすくめます。
「まぁ~、なんてことかしらね!あんたみたいな何処の馬の骨ともしれない女と由緒正しい侯爵家の長男であるザウダちゃんが結婚できたのは、一体どうしてだったと思う!?」
「…………」
ルナリーは反応を示しません。先ほどまではしゃがんで書類を拾いましたが、姿勢を戻して今は伏し目がちに立っているだけでした。
「あんたの生家であるちんけな下級貴族の家が、ちんけなりにまぐれで成金として名を上げ始めたからよ」
「……っ」
ルナリーの目元が、ぴくりと動いたような気がしました。それとも、それはアルコールで揺らいで見える義母の目の錯覚でしょうか?
彼女を呼びつける前にもグラスを何杯か開けていた義母は、それはそれは大きなため息をついて……
「それが何だい、商売に失敗して傾いたって!?あんたのところから金を取ったら、いったい何が残るのかねえ!」
「………」
ルナリーは、やはり何も口にしません。ただ、書類を握りしめる手元に、少しだけ力が入ったように見えました。
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