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ルナリーは、自分に宛がわれた部屋を……今から戻ろうとしている方向へ、ちらりと目線を送ります。

ザウダのその言葉は、彼女にとっては言いがかりにも等しいものでした。
何せ二人は、ルナリーが嫁いで来てからただの一度も……

同じ部屋で過ごしたことすら、なかったのですから。

「ザウダ様」

ルナリーは、彼に向き直って話を始めます。

「な、なんだっ」

「そのことなんですけれど……あなたは……」

ルナリーには、カテリィナの報告を聞いてから疑問に思っていたことがありました。


「子供が出来なかったのが私のせいだと言いますけれど、私とザウダ様がいつ、そのような行為を……?」

さっきの朝食の時には周囲をおもんばかって伝えられなかった言葉を、ついルナリーは口にしてしまいました。


姑からは何かがあるごとに、格下である子爵家から貰ってやった、と何度も告げられ……
そして、その格下の子爵令嬢との間に子供が設けられるのがどうしても嫌だったのでしょう。

何かと邪魔をされて、二人になる時間はほとんどありませんでした。
もちろん、ザウダの部屋に立ち入ることも許されないような事態です。
一年もの間、ただの会話にも監視がつくような有り様で……

それでどうやって子が成せましょう?


しかし今度は、それを聞いたザウダが顔をしかめる番でした。

「君が嫁いで来て、すぐの夜だ。僕が婚姻の心得を話している時に、君は眠ってしまっただろう」

「あぁ……」

それは確かに、ルナリーにも覚えがありました。
しかしそれは甘い記憶では全くなく……


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