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ルナリーは、平静を装った……大声ではなくとも、静かに通る声を出して場の面々へと告げました。
「……それでは、わたくしは先に自室へ戻らせて頂きます」
(どう見ても、お話にも不要なようですし……)
それが証拠に、姑とカテリィナはルナリーのその言葉も姿も、まるでこの部屋にいなかったような対応をしてこちらへ目線も寄越しません。
「新しい部屋を用意しなくてはならないねぇ」
「家具も全て新調いたしましょうお義母様ぁ、いっそのことお義母様のお使いの物も手配してぇ……」
「あら、いいわね。カテリィナは本当に気が利くこと。ねぇ、ザウダ……?」
「え?あ、あぁ……そうですね、お母様……」
二人の会話は留まることを知らないでいて。
ルナリーは再び心の中だけでため息をついて、そっと席を立ちました。
ザウダは、姑と第二夫人に挟まれて曖昧な相槌を打っていたのですが、ルナリーの為に広間の扉が開かれてるのを見て、やっと彼女が部屋を出ていこうとしているのに気付いたようでした。
心ここにあらず、と言ったところだったので……先ほどのルナリーの声は、彼にだけは本当に聞こえなかったのかもしれません。
「あ……ルナリー!ちょっと待て、まだ話は……」
ガタンッ!
慌てたように立ち上がるザウダ。使用人が椅子を引く前にそうしたものですから、脚がしっかりとテーブルへ当たってしまい……
ティーカップがあえなく倒れてしまいます。淹れたての紅茶が、卓上へこぼれて行きました。
──ばしゃっ
「ぎゃあっ!?」
「お、お義母様!」
膝の上に熱々の紅茶を浴びてしまったのでしょうか、そんな悲鳴が聞こえました。
扉を閉じるときになって聞こえたその声……ですが、今度はルナリーが知らないふりをして、そっと静かに退出をしました。
「……それでは、わたくしは先に自室へ戻らせて頂きます」
(どう見ても、お話にも不要なようですし……)
それが証拠に、姑とカテリィナはルナリーのその言葉も姿も、まるでこの部屋にいなかったような対応をしてこちらへ目線も寄越しません。
「新しい部屋を用意しなくてはならないねぇ」
「家具も全て新調いたしましょうお義母様ぁ、いっそのことお義母様のお使いの物も手配してぇ……」
「あら、いいわね。カテリィナは本当に気が利くこと。ねぇ、ザウダ……?」
「え?あ、あぁ……そうですね、お母様……」
二人の会話は留まることを知らないでいて。
ルナリーは再び心の中だけでため息をついて、そっと席を立ちました。
ザウダは、姑と第二夫人に挟まれて曖昧な相槌を打っていたのですが、ルナリーの為に広間の扉が開かれてるのを見て、やっと彼女が部屋を出ていこうとしているのに気付いたようでした。
心ここにあらず、と言ったところだったので……先ほどのルナリーの声は、彼にだけは本当に聞こえなかったのかもしれません。
「あ……ルナリー!ちょっと待て、まだ話は……」
ガタンッ!
慌てたように立ち上がるザウダ。使用人が椅子を引く前にそうしたものですから、脚がしっかりとテーブルへ当たってしまい……
ティーカップがあえなく倒れてしまいます。淹れたての紅茶が、卓上へこぼれて行きました。
──ばしゃっ
「ぎゃあっ!?」
「お、お義母様!」
膝の上に熱々の紅茶を浴びてしまったのでしょうか、そんな悲鳴が聞こえました。
扉を閉じるときになって聞こえたその声……ですが、今度はルナリーが知らないふりをして、そっと静かに退出をしました。
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