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元子爵令嬢であるルナリーが侯爵家の元へ嫁いで来たのは、一年と少し前のことでした。
結婚をしてちょうど一年経ったころ……姑が連れて来たのが第二夫人のカテリィナでした。
そして、その三か月後。
カテリィナは、子供が出来た、と。
皆の前で宣言したことになるのですが……
子供の作り方を知らないはずの夫ザウダ。
……少なくとも、ルナリーだけが彼の妻であった一年間は、そのはずでした。
でも……
(その第二夫人に、子供が出来た?)
「それって……」
「ほ、本当かいカテ……」
疑問が頭の中で言葉になってしまって、ルナリーは思わず声を出し掛けます。
同時に、ハッとしたようなザウダの声もこぼれました。
しかし、その声達は義母の声にかき消されてしまいます。
「まああ!何っておめでたいのかしら!」
義母……ザウダの母親は高い声を張り上げました。
年若いころに嫁いでザウダを懐妊したとされる彼女は、未だ女性らしさを忘れていません。
朝食という、本来簡素な時間でさえ両手や首元をアクセサリーで華やかに彩っています。
それを女性らしさと呼ぶべきかは場合によって分かれるところであるでしょうが……少なくとも彼女は、いつ何時も着飾ることを忘れないようにすることが、女性らしさであるとしているタイプの人物でしたので。
一部分の隙もないように紅の塗られた唇が、笑顔の形になりました。
「カテリィナは本当に嫁ぎ先の孝行娘だわ」
カテリィナも嬉しそうに、口元を覆うように手を添えて笑います。
姑に、そしておそらくザウダにも可愛がられているカテリィナ。姑同様……とはいかずとも、それなりに着飾った出で立ちでありました。
可愛らしい容姿を柔らかくくねらせ、語尾の伸びた甘い口調で首を傾げて……
「うふふふふ。ありがとおございます、お義母さまぁ」
結婚をしてちょうど一年経ったころ……姑が連れて来たのが第二夫人のカテリィナでした。
そして、その三か月後。
カテリィナは、子供が出来た、と。
皆の前で宣言したことになるのですが……
子供の作り方を知らないはずの夫ザウダ。
……少なくとも、ルナリーだけが彼の妻であった一年間は、そのはずでした。
でも……
(その第二夫人に、子供が出来た?)
「それって……」
「ほ、本当かいカテ……」
疑問が頭の中で言葉になってしまって、ルナリーは思わず声を出し掛けます。
同時に、ハッとしたようなザウダの声もこぼれました。
しかし、その声達は義母の声にかき消されてしまいます。
「まああ!何っておめでたいのかしら!」
義母……ザウダの母親は高い声を張り上げました。
年若いころに嫁いでザウダを懐妊したとされる彼女は、未だ女性らしさを忘れていません。
朝食という、本来簡素な時間でさえ両手や首元をアクセサリーで華やかに彩っています。
それを女性らしさと呼ぶべきかは場合によって分かれるところであるでしょうが……少なくとも彼女は、いつ何時も着飾ることを忘れないようにすることが、女性らしさであるとしているタイプの人物でしたので。
一部分の隙もないように紅の塗られた唇が、笑顔の形になりました。
「カテリィナは本当に嫁ぎ先の孝行娘だわ」
カテリィナも嬉しそうに、口元を覆うように手を添えて笑います。
姑に、そしておそらくザウダにも可愛がられているカテリィナ。姑同様……とはいかずとも、それなりに着飾った出で立ちでありました。
可愛らしい容姿を柔らかくくねらせ、語尾の伸びた甘い口調で首を傾げて……
「うふふふふ。ありがとおございます、お義母さまぁ」
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