上 下
1 / 81

1

しおりを挟む
珍しく、この屋敷で暮らす貴族の面々が揃って迎えた朝食の時でした。

席についているのは侯爵令息であるザウダ。
第一夫人であるルナリー、第二夫人のカテリィナ、そして侯爵夫人の姑です。

侯爵令息であるザウダは、何となく沈んだ顔をしています。
夫のそんな様子を、彼の第一夫人で元子爵令嬢のルナリーはちらっと眺めました。

姑や第二夫人のカテリィナと、第一夫人のルナリーとは、お世辞でも仲がいいとは言えません。
仮にも正妻であるルナリーとその他の女性の関係がよくないことは、彼女たちの夫であり息子であるザウダには何となく、居心地が悪いことなのかもしれません。

それは、ルナリーが勝手に居心地が悪くなっているだけかもしれないけれど……
けれど原因の大部分は、二人の女性があからさまにルナリーを敵対視していることにありました。


その日も、表面上だけは穏やかに食事を終えた後……

食後の紅茶を辞退しようか、なんていう案がルナリーの頭を掠めた頃。
ぱんっ、と手を打ち付ける、明るい音がその場に響きました。


「皆様~、本日はとてもステキなニュースがございますの!」

それは、第二夫人のカテリィナ。
夫であるザウダの母親……ルナリーの姑にあたる人物が勝手に連れてきた女性でした。


手を打ち付けて皆の注目を集めたカテリィナは楽しそうに、誰の返事も聞かずに話を続けました。

「わたくし、とうとう子供を授かったのですわ!」

(……え?)

ルナリーは、カテリィナの言葉に眉をひそめます。

(子供……ですか)

義母は確かに跡継ぎをずっと望んでいたし、第二夫人の彼女が身籠ったことも、何の不思議もないかもしれません。

(……でも、おかしいわね)

第二夫人である彼女の夫……もちろん、ルナリーの夫でもある侯爵令息のザウダ。

(彼、どう考えても……)

子供の生命がどうやって女性のお腹に芽生えるのかを。
つまり、端的に言えば。

(子作りの方法を、全くと言っていいほど知らなかったはずなんですけど)
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

完璧王子と記憶喪失の伯爵令嬢

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:995pt お気に入り:6

預言

SF / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:0

今更あなたから嫉妬したなんて言われたくありません。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:702pt お気に入り:2,878

願いを叶える魔法のランプを手にした物語

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,321pt お気に入り:1

料理の恋愛小説

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,293pt お気に入り:1

婚約者と妹が駆け落ちし、婚約は破棄されました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:9

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,280pt お気に入り:3,611

処理中です...