(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

泉花ゆき

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ぱち、と瞬きをするオーロラ。
先に大きな反応を見せたのはビートでした。

「何だ!
お前まで僕を馬鹿にしに来たのか!?」

侯爵家からの伝令、とある通りビートの家に仕える身の者がやってきたのでしょう。
心置きなく威張り散らせる相手が見えたことで、ビートのたががまたひとつ外れたようでした。

予想もしないことを言われて驚いたのは伝令者です。
伯爵家の敷地内へ入る許可も出されずに門の近くで狼狽える様に、ビートはずかずかと途中まで歩みよって叫びました。

「い、いえ、その……っ」

「用があるならそこで伝えろ!
僕は今忙しいんだ」

伝令者は、伯爵家の人物である門番やオーロラをおもんばかるように視線を巡らせましたが。
オーロラが彼に分かるように掌を差し出して水を向けたことで、口に出す決心がついたようでした。

「っ……恐れながら申し上げます、侯爵様から……お父上から伝言です!」

「……父上から?」

ビートの動きが、ぴたりと止まりました。
彼にしても、その伝令は予想外だったようです。
先を促すか黙らせるか、一瞬迷ったビートでしたが……
伝令者が伝言を伝え始めるほうが先でした。
もっとも、内容は伏せられたものでしたが。


「とにかく……至急、家に戻るようにとの仰せです……!」

「何だと……?」
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