(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

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オーロラがストレートな言葉をもって伝えたことの意味も、ビートは一瞬何を言われているのか分からないようでした。
彼の目から見て高価なものといえば、きらきらとした宝飾品や飾りをふんだんに使ったフリルで波打つドレスであり。
ロコの着ていたようなシンプルなワンピースに高値がつくとは、どうにも信じられなかったのでしょう。

疑わし気な顔つきでオーロラを眺め、それが嘘ではないと分かった時……
ビートの口から出たのは、ロコを責めるような言葉でした。

「しかし……しかし、彼女はそんなこと一言も言っていなかった！」

オーロラは眼を伏せるようにしてビートから視線を逸らします。
私と姉のマリアンヌが見た時には、はっきりと、そうと分かるようなワンピースを着ていました。
彼と出会ったときのロコも、おそらく同じような仕立てのワンピースを着用していたということでしょう。
それが分からないということは……

「見ればそれと知れるもの、という認識があったんじゃないですか。
もしくはあなたへそれを明かす必要を感じなかった……
でも、粗末にされたことには気付いたみたいですね」

価値を知っていてなお雑に扱ったのか、価値を知らないものとして粗末にしたのか……
ビートの行いは後者であり、そのことに、周囲にいるものだけが気付いたことになります。