(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

泉花ゆき

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オーロラのような年下の女性に、知られたくないことを知られている、という現状は。
ビートのようなプライドの高い男の心を、ひどく手折ったようでした。

釣り合いのとれないと諭されて、頭に浮かぶのはやはりもう一人の女性……ロコのことです。
ビートは、勢いを失ったまま、ぶつぶつと口の中でつぶやきました。

「……僕は……いや……
……たとえ、僕一人だとしても、そんな……
ロコ……僕には、ロコが……」

ビートの口からこぼれた言葉に、オーロラがひっそりと眉をひそめます。
言うか言うまいか、と逡巡した後で、やはり告げることにしたようでした。

「……ロコさんにも、もう近づかないほうがいいですよ」

それは静かな忠言でしたが。
ビートにとっては、驚くような言葉でした。

「なんだと……なぜ、お前がロコを……」

ロコを引き合わせたのはマリアンヌであって、オーロラではない。
という、単純なことしか浮かばなくなっているビート。

「結婚をしたい、と不義を働いた婚約者の方が連れて来た女性ですから。
それは、こちらでも調べます。
……でも、ずいぶんと無礼を働いていたみたいですし……」

オーロラは当然のごとく話の流れを説明しますが、ビートの中では詮索された、という思いが湧き出ました。

「こ、こそこそと嗅ぎまわるなど……!」
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