(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

５２

ビートは一瞬、オーロラに言われたことの意味が呑み込めませんでした。
オーロラは、新しい婚約相手、と言いました。
マリアンヌは、自分というものがありながら、こんな短期間で他の男性に乗り換えたと。
そういうことになってしまいます。

「な……今、何と……」

「ですから、新しい婚約相手の方です。
……失礼、まだ正式には婚約しておりませんけれど。候補の方、と呼ぶべきかしら？
けれど、もう何人もの方から社交や交流のお誘いをいただいておりますの」

正式には婚約していない、と聞いてどこかホッとするビート。
しかし、続く言葉を聞いて、なお悪いということを思い知ります。

「っマリアンヌには、僕という婚約者がいるというのに！
それなのに不特定多数の男性と会うだと……！？」

オーロラはうんざりと半眼になりました。

「ですから、婚約破棄には同意致しましたので」

「言葉の綾だと言っているだろう！
大体、大体……もし、万が一だ。
僕とマリアンヌの婚約破棄が成立しているとして……
その直後の年頃の貴族令嬢がすぐに出会いを求めるなど、外聞が悪いと思わないのか！？」

「表向きは家同士の交流となっております。
……というか……
婚約者というものがありながら、他の女性を結婚相手だとして引き合わせた方の台詞ですか？」