(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

４６

ロコとの仲を一方的に違えてからすぐ。
ビートは侯爵家へ帰宅すると共に、当主である侯爵……ビートの父親と話す約束を取り付けます。
それは、市街地にあるロコの店のことを伝える……
自分に無礼を働いたことを告げ口するつもりだったのです。

本人だけなら世間知らずで済ませられるところでも、ロコは確かに、彼女の両親も同じ気持ちだと。
意向を伝えてきました。
それはつまり、一族でビートを……引いては、侯爵家を馬鹿にしているということになります。

ビートは我慢ならず、父親の自室を訪れると自分の怒りをぶつけました。
父親は始めのうちは話を聞いてくれているようにもみえました。

しかし……

「何？その店は……――商会ではないだろうな」

父親は、ビートには知らない名前を告げて来たのです。
首を傾げて供のものに視線をやると、彼は確かにそうだ……というように頷きを見せました。

「……そのようですね。しかしそのような名前は……」

供の頷きを受けて同意を見せると、父親は顔を真っ青にします。

「なんと、なんと愚かなことを……
すぐに謝罪を……いや、いい！お前は、お前は大人しくどこにも顔を出すではない」

そう言ってビートを叱責すると、慌ただしく屋敷を出ていってしまったのでした。
後には、あっけに取られたビートが残るばかりです。