(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

泉花ゆき

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特に何の説明もないままにロコを伯爵家へと連れて行ったビートは、マリアンヌへと婚約破棄を告げます。そして、自分には新しいあてがあるのだというようにロコの事を紹介しますが……
マリアンヌがさっさと婚約の解消に同意したこと、そしてマリアンヌとロコが親しく話し出そうとするのはとても不快なことでした。

言いたいことだけを告げたビートは帰ろうとしますが、折悪くその時に天候が乱れて行きます。
大粒の雨は見る間に地面の色を変えて、舗装されない場所はぬかるみすら見せていました。

「あの~、雨が……」

ロコがそんなことを気にするので、ビートとしては気を利かせたつもりで、馬車までの道を突っ切ることを選びます。
そこには人が通るための石畳はなく、足元がやや濡れてしまうかもしれませんが、特に構うこともない……ビートはそう考えていました。

ぐずぐずしていると、またマリアンヌが上から物を言うように傘を差し出して来るかもしれません。施しを受けるようで気分が悪い、と、ビートは一刻も早く伯爵家を出たがりました。

「この道を突っ切ろう」

ビートがそう告げる間にも、要らぬお節介を焼かれそうになり……とうとう、ビートはマリアンヌを怒鳴って追い払います。そしてロコの手を強引に取って、雨の中を走っていったのでした。
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