(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

２０

「お店について？」

「はい。我が伯爵家でも被服を扱うことはありますし……」

商人も貴族も縦と横のつながりはどこにでもあるもの。
ビートが一人でそんなホラを吹いているのか、それとも周囲を既に説得しているのか。
ロコがどれだけの話を聞いているのか……そのあたりは、少し調べれば当たりが付けられるかもしれない。

オーロラは、そんな話をマリアンヌにした。

「ビート様がどれだけのことを踏まえ、考えてお姉さまにそのようなことを伝えたのか。
今の段階では分かりかねますし……」

場合によっては、侯爵家へ正式な抗議として話を届けなければならない。
ビートは果たして先々のことまで考えているのだろうか。
そしてロコとロコの家で営んでいる商売のことを、どこまで把握しているのか……

今日話してみた感じでは、ほとんどあまり、考えていない……
勢いだけの婚約破棄だったような。
そんな風にも見受けられてしまったけれど……

つい、考え込みそうになってしまったマリアンヌ。
正しい情報は多ければ多い方がいい。
そう考えて、オーロラへと頷いて見せた。

「そうね……私も、両親へ少しお話を聞いてみることにします」

この婚約のこと。
そして、侯爵家から婚約に関する打診が何か来ていないかということ。

また話をしたいとマリアンヌから告げたこと、ビートがあの調子では了承が得られたのかは分からないけれど。
何も準備していなかった今日と異なり、少し情報を集めてみましょう……
そう、マリアンヌも告げたのでした。