(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

泉花ゆき

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貴族、それも上級貴族となれば多かれ少なかれ伝統を大事にする界隈です。
ビートの家である侯爵家だって、そういったことは往々にしてあることでしょう。

代々伝わってきた宝石、年頃の娘は身に着けるように言われているしきたり……
そういったことの全てを派手だとか、財をひけらかすためだと言われてしまったと。
マリアンヌの話に、オーロラもため息をつきました。

「こんなこと、私が申しあげてもいいのかは分かりませんが……婚約破棄はともかく、解消は正しい選択だと思えます。
お互いのこと……家を尊重できない相手とは、きっと難しいことでしょうから」

オーロラのその話に、マリアンヌも苦笑して応えました。
マリアンヌも同じような考えを持っていたためです。

「……それに、図らずとも……ですけど。
ジュエリーの効能があった、ということに繋がりますし……」

代々伝わるアンティークブローチ。
それはただのお飾りではなくて……品が伝えられると同時に、継承されている逸話があったのでした。
若い姉妹にとって、その話はお伽話のようなものでしたが……

「……それにしても、侯爵家は大丈夫なのですか?
今回の縁談は、あちらからの申し出だと聞いていましたけれど……」

「そうなの。けれど、ビート様がおっしゃるには、大丈夫だそうよ。
……その、本日も……あの方は、豪商のおうちの方だと、お連れ様を紹介にいらしたみたいで」

「豪商、ですか?」


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