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帰宅した妹……オーロラに席へ着くように勧めるマリアンヌ。
オーロラはマリアンヌの2つ下ですが、商才に秀でている才女です。
今日も、伯爵家の貿易に関わる品や市場を見て見識を深めに行っていたところでした。
使用人の引いた椅子へと腰掛けたオーロラは、少し気遣わし気にしていました。
「帰ってくる途中、侯爵家の……おそらくビート様の乗った馬車と入れ違いました。
本日は一体どのようなご用向きだったのですか?」
予定よりもずっと早かった帰宅。
それを案じて話すオーロラからは、姉の婚約者へ挨拶をしようと考えていてくれたのが伝わります。
それを聞いて、マリアンヌも苦笑しながらカップを下ろしました。
「……申し出は、いつもの……お茶会のはずだったのだけれど。
何だか、私との婚約を解消……いいえ、破棄したいのだとおっしゃっていて」
「破棄?それはまた急に……それに、お姉さまに何の落ち度があるというんです」
オーロラは、幼さの残る表情を疑わし気にしかめました。
解消ではなく破棄と言うなら、それなりに根拠があるに違いない……そう言った感情です。
「なんでも、私の格好が気に入らないのだそうよ」
「……格好、ですか?」
オーロラは、今度はきょとんと表情をあどけなくさせました。
彼女には、あまりに予想外の話だったようです。
「……何か奇抜な格好でもされていたのですか」
ストレートにそう聞かれ、マリアンヌは少し気持ちを和らげました。
突拍子もない格好でも想像されたのかしら……と、妹の想像力がほほえましかったからです。
「いいえ、この通りのままで……いつもと変わらない、のだけれど」
オーロラはマリアンヌの2つ下ですが、商才に秀でている才女です。
今日も、伯爵家の貿易に関わる品や市場を見て見識を深めに行っていたところでした。
使用人の引いた椅子へと腰掛けたオーロラは、少し気遣わし気にしていました。
「帰ってくる途中、侯爵家の……おそらくビート様の乗った馬車と入れ違いました。
本日は一体どのようなご用向きだったのですか?」
予定よりもずっと早かった帰宅。
それを案じて話すオーロラからは、姉の婚約者へ挨拶をしようと考えていてくれたのが伝わります。
それを聞いて、マリアンヌも苦笑しながらカップを下ろしました。
「……申し出は、いつもの……お茶会のはずだったのだけれど。
何だか、私との婚約を解消……いいえ、破棄したいのだとおっしゃっていて」
「破棄?それはまた急に……それに、お姉さまに何の落ち度があるというんです」
オーロラは、幼さの残る表情を疑わし気にしかめました。
解消ではなく破棄と言うなら、それなりに根拠があるに違いない……そう言った感情です。
「なんでも、私の格好が気に入らないのだそうよ」
「……格好、ですか?」
オーロラは、今度はきょとんと表情をあどけなくさせました。
彼女には、あまりに予想外の話だったようです。
「……何か奇抜な格好でもされていたのですか」
ストレートにそう聞かれ、マリアンヌは少し気持ちを和らげました。
突拍子もない格好でも想像されたのかしら……と、妹の想像力がほほえましかったからです。
「いいえ、この通りのままで……いつもと変わらない、のだけれど」
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