(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

泉花ゆき

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二人……というより、ビートの機嫌とロコの体調などを案じながら部屋に戻ったマリアンヌ。
伯爵家の当主であるマリアンの父、そして伯爵夫人である母は貿易のための外交で屋敷を明けています。
戻って来てからの報告というには事が少し大きくなりそうなので、マリアンヌはひとまず手紙を書いて報告することにしました。

簡単に事実のみを……ビートがやってきて婚約を破棄したいと言ったこと、その際に格好が派手だと言われたことなどを書き添えます。
また、言われた時の服装がどのようなものだったのかも記しました。
あまり感情的なことは書かずに、なるべく事実のみを書き記すことで、両親の客観的な判断も仰ごうといったところです。

さらさらと走らせ簡素ながら状況をしたためた手紙。
それへ蝋封を施して使用人に預けたマリアンヌは、一息つくことにしました。

ビートの来訪は以前から決まっていたこととはいえ、ビートは伯爵家で何をして過ごすでもなく、女性を連れて来てすぐに出ていってしまったものですから。
用意してあったお茶の用意も無駄にしてしまうところです。

「ふう……」

メイドの淹れた紅茶を口元へ運び、その香りと味でわずかながら癒しを得てから息をつきます。
そこへ、伯爵家の次女であるマリアンヌの妹が帰宅したという知らせを受けました。

馬車からの道とは言え足元が湿ったらしく、着替えてから入ってきたようです。
そして、道すがらに伯爵がすでに帰宅した……そのことだけ、ひとまずの報告を受けたようでした。

「ただいま戻りました、お姉さま……ビート様、もうお帰りになっていたのね」



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